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《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)9

 結局、何とかカンナの誘いを振り切って、魅恵は満員の坂崎線に乗った。女性専用車両なので、車内は全て女性である。バイト初日の帰りからは、魅恵は痴漢を避ける為、女性専用車両を使っていた。
 汗に化粧品、香水などの臭いが混ざり合っているので、車内の臭いは、普通車両よりもきついのだが、臭いには数分で慣れるので、問題は無い。魅恵は降車駅である破魔崎駅まで開かないドアに寄り掛かり、窓の外を眺めて、時間を潰していた。
「暑い……」
 満員に近い車内は、汗ばむ程に暑かった。今日は初夏の様な陽気だと、今朝の天気予報で言っていたので、魅恵は黒のキャミソールに、ジーンズを足の付け根でカットオフした、デニムのショートパンツという、真夏の様な格好だったのだ。
 男物の夏物は、まだ押し入れの中だったのだが、晶に貰った女物の服の中に、涼しそうな夏服があったので、魅恵は初めて女物の服を着て、バイトに行ったのである。キャミソール姿では、普段のスポーツタイプのブラだと露出してしまうので、肩を出す服を着る場合用にと晶がくれた、チューブタイプのブラを、魅恵は着けていた。
「クーラーつけて欲しいな……」
「確かに、ちょっと暑すぎるわね……」
 魅恵の呟きに、魅恵の前にいる乗客が、同調した。前といっても、魅恵は左側……窓の外を眺めていたので、どんな客だかは、知らなかったのだが。
 魅恵は自分の独り言に、誰かが同調した事にも驚いたが、声を発した乗客の姿を見て、更に驚いた。晶より背が高い、百八十センチを越えていそうな長身の上、日本人では無かったのだ。いわゆるアングロサクソン系の外見の、女性だったのである。
「君なんか、まだ楽な方よ。薄着の上、肌だって出してるんだし」
 女はスーツ姿だった。しかも、ダークな色調の。
「スーツは暑いでしょうね。黒だったら、尚更……」
「暑いよ、胸元とか開ければ、少しは涼しくなるかもしれないんだけど、開けてもいい?」
「――どうぞ、御自由に」
「ありがとう。女性専用車両だと、多少はだらしない格好しても平気だから、楽よね……」
 そう言うと、女はブラウスのボタンを、外し始めた。周りに女しかいない気楽さからだろう、女は大胆にブラウスの前を開く。
 黒のシンプルなブラに包まれた、胸の谷間が顔を出す。カンナ程では無いが、かなり大きい。
「これで結構、楽になるわ」
 自分にも付いているし、晶とカンナにも、頻繁に見せられているので、少しは見慣れたとはいえ、やはり間近に胸の谷間を目にするのは、魅恵には少し恥ずかしい。魅恵は、少し顔を赤らめながら、女の谷間から目を逸らし、話題を変えた。
「――日本語、上手いですね」
「上手いというより……日本語しか喋れないの、あたし」
「日本語しか?」
「親はイギリス人なんだけど、日本に定住してるんで、子供のあたしも日本語で育てられたから、英語は苦手なの」
「見た目からは、想像出来ないな……」
「皆、そう言うよ」
 微笑む女の派手な顔立ちを見て、魅恵は誰かに似ているなと思う。誰に似ているのだろうと、少しの間考え続けた魅恵は、化粧品のCMに出てる外人のモデルに似ているのだと、気付く。
 電車が、駅に停車する為に減速する。慣性のせいで、魅恵は進行方向にいた女の方に、倒れ込み、女に抱きとめられる。
 女よりも、十五センチ程背が低い魅恵は、女の胸元に、顔を乗せるような体勢になってしまう。
「あ、すいません」
「気にしないで……」
 顔を赤らめ、魅恵は女から身体を離そうとするが、女は魅恵を抱きとめたまま、魅恵を離そうとしなかった。そのまま、停車した電車の中に、乗客が乗って来て、満員に近かった車内は満員となり、魅恵は女と身体を密着させ、胸元に顔を乗せたまま、身動きがとれなくなる。
(ん?)
 突如、魅恵は左胸を軽く揉まれた。車内は混んでいる為、最初は誰に揉まれたのか分からなかったのだが、程無く、魅恵は自分の胸を誰が揉んだのか、気付く。
 揉んだのは、目の前の女の右手だった。女は左腕で魅恵を抱き締めながら、右手で胸や……魅恵の身体を、触り始めたのだ。
「あの……何するんですかっ?」
 顔を赤面させながらも、女を睨んで抗議する魅恵の耳に、女は顔を寄せ、囁いた。
「君、女の方が好きなんでしょう?」
「え?」
「あたしの胸見て、顔を赤くしてたじゃない。あの反応見れば、分かるよ」
 女が胸元を開いて見せたのは、魅恵の反応を見て、魅恵が女を性的な対象としているかどうかを、確認する為だったのだ。
「あたしも同類よ、安心して……」
 無論、見知らぬ他人に、身体を触られて、安心など出来る訳が無かった。
「痴漢……じゃなくって痴女されて、安心出来る訳、無いじゃないで……ん……」
 女は、魅恵の頭を抱え込んで、顔を自分の胸に押さえ付けて、魅恵の抗議の言葉を、遮る。そのまま身体を捻って、魅恵をドアに押し付ける。女の方が、かなり身体が大きいので、魅恵の姿は、殆ど誰にも見えなくなってしまった。
 魅恵の身体の自由を奪い、身体を周りから見えない様にした女は、大胆に魅恵に痴漢行為を働き始める。手始めに、魅恵のキャミソールの中に手を侵入させ、ブラのホックを外して、魅恵のブラを抜き取り、ジャケットのポケットに仕舞う。
 キャミソールの中に両手を入れ、魅恵の双乳を、握り込む様に揉み始める。微妙な強弱を付け、指先で乳首をこね回す。
 多少、強引な愛撫ではあるが、相手が美形の女性のせいか、不快感よりも快感が勝ち、すぐに魅恵は乳首を起たせてしまう。
(俺、胸が感じやすいのかなぁ?)
 女とはいえ、見知らぬ他人に胸を愛撫され、しっかりと感じ始めている自分に、魅恵は当惑する。
(晶が毎日、俺を抱くから、感じやすくなってきてるのかも)
 付き合い始めてから毎日、晶は魅恵の家を訪れて、当たり前の様に、魅恵を抱いている。未開拓であった女性としての魅恵の身体を、かなり晶は開発してしまっているのだ。
 一昨日から晶が合宿に行ってしまったので、この二日間、セックスとは無縁だった魅恵の身体は、愛撫に少し餓えていた様で、女の愛撫に好意的に反応してしまっている。胸を愛撫されただけで、股間が少し、体液を分泌してしまった程に。
 女は右手を下に下ろし、ショートパンツのボタンに手をかけ、外した。そのまま、ファスナーを下ろして、中に右手を潜り込ませる。ゆっくりと周りを責めてからなどという、悠長な真似をせず、女は直に谷間に指を這わせ、クリトリスを探し当てる。
 一番敏感な部分を指で摘まれた魅恵が、漏らした吐息を耳にして、女は感じているのを察したのだろう。指を震わせ、女は魅恵に刺激を加え続ける。
 女の指を外そうと、魅恵は腰を動かすが、女の指は外れない。それどころか、ショートパンツがずり落ちそうになったので、両手で押さえなければならなくなり、両手の自由が無くなってしまう。
 突如、女はクリトリスから指を離し、少し下にある膣口の上を、撫で始める。
「もう濡れてるけど……向き合ったままだと、入れ難いね」
 女は左手をキャミソールの中から引き抜いて、魅恵の身体を、時計とは逆向きに半回転させ、ドアに押し付けた。背後から魅恵を責められる体勢を、女はとったのだ。
 両手でショートパンツを押さえている上に、女に下着の中に右手を入れられたままだったので、魅恵は動き辛い状態だった。その為、殆ど抵抗出来ずに、魅恵は女の為すがままになる。
 バイト初日に、二人組の痴漢に襲われた時と、状況は似ている。しかし、女の方が手際が良く、手口が大胆だった。
 まだ襲われ始めてから、五分も経っていないのに、既に魅恵は、谷間を直に弄られてしまっている。
「まだ破魔崎駅まで、五分近くあるから、十分に楽しめるね……。君、破魔崎で降りるんでしょう?」
 女に耳元で囁かれた魅恵は、自分が降りる駅を、女が知っていた事に驚き、焦る。
「あたしも、破魔崎で降りるんだ」
「何で、俺の降りる駅を?」
「何日か前から、君には目を付けてたの。美味しそうな子がいるなってね。あたしと同類だとは、思わなかったけど……」
 同類とは、同じ性的趣向の持ち主だという意味である。
「俺、レズじゃなくって、男なんです!」
「――面白い冗談だけど、男の人のここには、指が入ったりしないんじゃないのかな?」
 女は魅恵の膣口の中に、人差し指と中指を沈め始めた。きつい膣口は、指を押し止めようと抵抗するが、女は構わず指の第二関節辺りまで、魅恵の中に突き立てた。
「うぁ……」
 魅恵は堪らず、情けない声を漏らしてしまう。女は楽しそうに、指を前後に動かし始めた。
「きついけど……もう経験済みみたいね。初めてかもって思ってたから、ちょっと残念」
 指を前後に動かしながら、女は囁いた。晶よりも、少し乱暴な愛撫だが、女は的確に魅恵の弱い部分を責めてくる。
(どうしよう? 変な気分に、なっちゃう……)
 魅恵は、見知らぬ他人……しかも痴女に、胸や股間を弄ばれ、性的に昂ってしまっている自分に、戸惑っていた。見知らぬ他人に、性的な行為をされる事への嫌悪感や不安感と、性的な快感への期待感が、拮抗しているのだ。
(このまま抵抗しなければ、いかせて貰えるのかも……。家に帰っても、晶はいないから、して貰えないし……。晶は、浮気とか気にしないんだよな……)
 様々な考えが、浮かんでは消えて行く。理性的な思考を、性的な快感への欲望と渇望が、突き崩そうとする。
 そんな風に、魅恵の拒否の姿勢が弛んだ事を、感じ取ったのだろう。女は、意外な行動に出た。
 突如、女は痴女行為を止めたのだ。下着の中から手を抜いた女は、魅恵のショートパンツのファスナーを上げ、丁寧にボタンまで止めてしまう。
「――?」
 いきなり痴女行為が止んだ事に、魅恵は戸惑う。だが、魅恵は女の意図を、すぐに理解する。
(あの時と同じだ……)
 魅恵は、晶との最初の性行為を思い出した。半ば無理矢理愛撫し始め、性的に昂らせた所で愛撫を止めて、魅恵に性行為の合意を取り付けようとした晶の事を、魅恵は思い浮かべたのである。
 女も晶と同じ事を、しようとしているに違い無いと、魅恵は勘付いたのだ。無論、晶ならともかく、見知らぬ他人……しかも、痴女行為を働く様な女とセックスをする気は、魅恵には無かった。
 魅恵は、後ろを振り返る。自分に靡いて来ると確信しているのだろう、自信有り気な笑みを浮かべている女の顔が、魅恵の目に映る。
「続き、して欲しい?」
「――パス! ブラ、返せ!」
 女のジャケットのポケットに、魅恵は手を突っ込んで、自分のブラを取り戻した。そのまま、ブラを自分のポケットに突っ込んだ後、魅恵は女を無視する様に、窓の外の景色を眺め始める。
 誘いを拒絶された上に、魅恵が自分を無視し始めた事は、女のプライドを、酷く傷つけた。女は苛々した様に、魅恵を睨み付ける。
 苛立つ女を無視して、魅恵は平然と外を眺め続けた。程なく、電車は破魔崎駅に到着したので、魅恵は素早く電車を降り、女の方を振り返りもせず、逃げる様にホームを走り去って行った。

「女性専用車両にまで、痴漢……じゃなくって痴女がいるとは思わなかったよ。油断出来ないな……全く」
 破魔崎駅から出た魅恵は、呆れた様に呟いた。
「ま、気にしてても仕方無いか。さっさと、夕食の買い物済ませて、帰ろうっと」
 駅近くのスーパーに向かって、魅恵は歩き出す。途中、通り過ぎるサラリーマンや学生の目線が、自分の胸に集まるのを感じて、魅恵は自分が、ノーブラである事を思い出す。
「ショートパンツに黒のキャミソールで、おまけにノーブラか……。殆ど露出狂だな、俺」
 魅恵は、スーパーの女子トイレで、ブラを着ける事にした。

 スーパーのトイレは、階段を上がった踊り場にあった。魅恵は、少し緊張しながら、女子トイレの中に入る。女の身体になってからは、外出中、基本的に女子トイレを使い続けているのだが、未だに女子トイレを使う事に慣れず、少し緊張してしまうのだ。
 有り難い事に、トイレは無人だった。魅恵は洗面台の鏡の前で、キャミソールを捲り上げ、ブラを着け始める。
 ホックが後ろにあるタイプなので、魅恵は少し手間取る。普段は着るだけでいいスポーツタイプのブラなので、背中のホックで留めるタイプのブラに、魅恵は慣れていないのだ。
 不慣れなブラの装着に戸惑っている魅恵の目が、鏡に映った女の姿を捉えた。女は、魅恵には見覚えのある顔だった。
 先程、電車の中で、魅恵に痴女行為を働いた、女だったのだ。女は魅恵の後を、つけていたのである。
 ブラを装着する為、後ろに回っている魅恵の両腕を、女は掴んだ。魅恵はもがくが、身動きが取れない。
「何すんだよ、この変質者!」
「――全く、人の誘いを断るわ、変質者呼ばわりするわ、顔とは違って、可愛気が無い子ね……」
 女は強い力で、魅恵を個室の中に、引きずり込む。
「誰か! 人を呼ん……痛っ!」
「騒ぐと、折るよ。あたし柔術習ってるから、君の腕を折る事位、簡単なのよね」
 魅恵は女に、腕を捻り上げられる。激しい痛みで、魅恵は声を出す気力を、失ってしまう。
 その隙に、女は自分のベルトを引き抜いて、魅恵を後ろ手に縛り上げる。
「念の為、口も塞いでおこうかしら」
 着ける途中だった魅恵のブラを手に取り、女は魅恵の口に噛ませる。女はブラを、猿ぐつわの代わりにしたのだ。
 あっという間に、魅恵は身体の自由を奪われ、声も出せなくなる。
「さーて、君みたいな生意気な子には、どんなお仕置きをしようかな……」
 勝ち誇った様な目で、女は魅恵を見る。女の目線が、魅恵の胸で止まる。キャミソールが捲り上がっているので、形が良く、程良い大きさの魅恵の乳房は、ほぼ露出していた。
「取り敢えず、胸からね」
 女は魅恵の両胸に掌を被せ、揉み始めた。パンの生地を捏ね回すパン職人の様に、荒っぽく大胆に。


        (体験版は、ここまで。以降、同人版に続く)


          ☆          ☆


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《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)8

「バイト、どうだった?」
 魅恵が家に帰るなり、コロッケとポテトサラダを手土産に、家を訪れた晶が、聞いた。
「疲れた、結構ハードだよ。あの店、かなり流行ってるんだね」
 晶は、ダイニングキッチンのテーブルに並べた皿の上に、持って来たコロッケとサラダを、並べ始める。
「カンナの母さん、料理上手いからね」
「晶と違ってね」
「――あたしだって、練習すれば、出来るってば!」
 インスタントのカレーが、まともに作れない程に、晶は料理下手なのだ。今日も、魅恵の為に夕食を用意して、土産として持って来てくれたのだが、全て、スーパーの惣菜売り場で買って来たものである。
「そういえば、カンナとBまでしたんだって?」
「え?」
 魅恵は驚きの声を上げ、目線を不自然に泳がせる。
「さっき、カンナに電話で聞いたんだ。バイト前にミケちゃんの事、ちょっと試してみたら、上手かったから、今度貸してって言ってたよ」
「あの、それは……」
「――女だと思ってHした相手が、後で男だって知ったら、カンナ、傷付いちゃうかもな……」
 女だと思ってHした相手が、後で男だと知ったら、傷付くかも知れないと思い、カンナとはHはしないと言った自分が、軽くではあっても、カンナとしてしまった事を指摘され、魅恵は返す言葉が無かった。
「誘ったのはカンナなんだろうけど、何で断らなかったの?」
「それは……その……カンナさんの胸見たら……抑えがきかなくなって……」
「確かに……友達だとは分かっていながら、カンナの胸は、あたしもたまーに抑えが効かなくなって、触っちゃう事はあるからね」
 晶は、納得したように頷いた。
「これからは、気を付ける!」
 カンナの誘惑に負けない事を、魅恵は改めて決意した。
「そうだね、あたしもミケちゃんに手を出すのは、バイト期間が終わってからにしてって、カンナに言っておくよ。バイトが終われば、ミケちゃんが男だってばらしても平気だし、その上で、カンナがミケちゃんをどうするかは、カンナが決めればいい事だから……」
 魅恵は、こくりと頷いた。
「案外、男の子に戻ったミケちゃんの方が、女の子のミケちゃんより良いっていうかもね。考えてみれば、カンナは一応、ノーマルなんだから……」
 晶の言葉に、魅恵はカンナの豊かな身体を、男として抱く光景を、想像してしまう。そんな想像をしている事を、晶は察したのか、軽く釘を刺す。
「――ミケちゃんが、男に戻ってカンナを抱くのは……あたしも見てみたいから、別に構わないんだけど、カンナの前に、あたしを抱いてよね……彼女なんだから」
「あ、うん。それは勿論」
 魅恵は素直に、頷いた。

(カンナの前に、あたしを抱いてよね……か。まさか、あたしが男に抱いてって言うなんて……)
 目の前で、夕食を食べている魅恵を見ながら、晶は思う。意外だなという感慨を、抱きながら。
 女の恋人の場合、初めての相手は、他の相手には譲らないというのが、晶の信条である。晶は所謂、初物好きという奴なのだ。相手が親友のカンナとはいえ、魅恵の男としての初めての相手を、初物好きの晶は、譲る気にはなれなかった。
 初めて男の身体を、自分から抱きたいと思った事に、晶は少し驚いた。無論、それは性的な要求というより、恋人として認識した相手に、自分の事を、深く刻み付けたいという、一種の独占欲的な要求なのだが。
 魅恵に対して、初物好きとしての性質が発現している事自体にも、晶は少し安心していた。心のどこかで、男である魅恵の事を、恋人だと思えないかも知れないという不安を、晶は本音では感じていたのだ。
 初めての相手になりたいという感情は、晶の場合、恋愛対象の相手以外に、感じない。何故なら、晶の初物好きの性質は、過去の恋愛絡みのトラウマを原因としているからである。
 つまり、男としての魅恵の、初めての女になりたいと思っている事自体が、魅恵を恋愛対象……恋人だと思っているという事を意味しているのだ、晶にとっては。
「ミケちゃんは、あたしの恋人なんだね……」
「――何だよ、改まって?」
「ん……何となく、そう思っただけ」
「変なの」
「これからは、ちゃんと料理の練習とか、しようかな……。結婚とかしたら、子供とか出来る訳だし、ちゃんと料理とか出来た方が良いもんね……」
「――本気?」
 魅恵の問いに、晶は頷いてみせる。
「今まで……結婚するとか、子供が出来るとか、考えた事が無かったから、料理なんて出来なくてもいいって思ってたんだけど、ミケちゃんのせいで、状況が変わっちゃったから」
 晶は、魅恵を抱き締める、
「嬉しいな……あたしも、母親になれるんだ」
「晶姉……」
「あ、エッチする時は、ちゃんと半分、女になってくれなきゃ、駄目だからね」
「……分かってるよ」
 魅恵は、少し複雑そうな笑みを浮かべて、食事を続けた。

 ハーベストでのバイトも一週間が過ぎ、八日目に入った。元々器用な魅恵は、既にバイトにも慣れ、ウェイトレスもレジも、ほぼ完璧にこなしていた。
 時々、カンナに更衣室で迫られるのだが、更衣室という場所柄、軽く身体を触り合う程度の行為より、先に進む事も無かった。女性専用車両を使うようにしてからは、痴漢とも無縁であり、魅恵のバイト生活は、順調そのものだったのだ。
 唯一の困り事と言えば、男性客からのナンパである。しつこく携帯電話の番号を聞き出そうとする客や、自分の携帯番号を書いたメモを手渡して来る客、バイトを終えた魅恵を、店外で待ち伏せする客など、一日平均三人程の男性客が、魅恵に何等かのアプローチをしてくるのだ。無論、全て魅恵は断るのだが。
 カンナや他のバイトの娘も、かなりルックスのレベルが高いので、魅恵同様のアプローチを男性客から受けるらしいのだが、皆、当たり前の様に断っていた。
「男との出会い、あるじゃないですか?」
 八日目の勤務時間が終わった後の更衣室で、男と出会う機会が無いと嘆いていたカンナに、魅恵は訊ねてみた。
「ナンパしてくるような軽い男は、パス。それに、仕事中の女を口説くような男なんて、働く女を軽く見てるとしか思えないよ」
 当たり前だと言わんばかりの口調で、カンナは答えた。
「私も仕事中には、ミケちゃんの事、口説かないでしょう?」
 カンナは笑いながら、そう付け足した。確かに、カンナが魅恵に迫って来るのは、仕事の前後や休憩時間だけだった。
「で、今日も口説いてみるけど、これから家に来ない?」
「――遠慮しときます」
 晶はカンナに、バイト期間が終わるまで、魅恵には手を出さない様に言ったのだが、効果は無い。
「晶は今、ゼミの合宿に行ってるから、帰っても会えないんでしょう?」
 魅恵は頷く。晶は一昨日から一週間、大学のゼミ合宿に行っているので、魅恵は暫く、晶と会えないのだ。
「晶がいなくて、欲求不満になってしまいそうな、ミケちゃんの欲望を、優しいお姉さんが満たしてあげようと言ってるのに……つれないなぁ……」
「カンナさんはノーマルなんですから、ちゃんと男の相手を探して下さい!」
「――そのつもりなんだけど、一応……。ちゃんとした出合いが無いのよね……」
 カンナは少し、悔しそうに言った。

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《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)7

 ハーベストに辿り着いた魅恵は、タイムカードを押して、更衣室に向かった。途中、白いコック服姿のスミレとすれ違った魅恵は、軽く挨拶を交わす。
「早いじゃない、ミケちゃん」
「取り敢えず初日なんで、家からの時間計ろうと思って……」
「そうなの……。それにしても、随分と男の子っぽい格好ね」
「あははは、女の子っぽい格好、慣れてないんですよ……俺」
「――俺?」
「あ、いや……私」
 魅恵は慌てて、言い直す。
「ヘアスタイルとか、全体的なイメージは、確かにボーイッシュ系だけど、顔は……南国系の美少女って感じだから、可愛い系のファッションも似合うと思うよ、ミケちゃん」
「そうかな……」
「とりあえず、うちの店の制服姿、楽しみにしてるわ。やっぱり、可愛い女の子は、可愛い格好しないとね!」
「はぁ……」
 この店の制服は、スミレがメイド服姿の女の子が好きだから、メイド服になったのだと、カンナが言っていたのを、魅恵は思い出す。

 更衣室には、誰もいなかった。調理はスミレが担当し、フロアとレジを、二人のウェイトレスが担当するので、あと一人、ウェイトレスが来る筈である。
 五つ並んでいるロッカーの端に、魅恵の名前が書かれたプレートが付いている。魅恵がロッカーを開けると、クリーニングしてある制服のセットが、棚に乗っていた。
 制服を手に取った魅恵は、恥ずかしい程に女の子っぽいというか、可愛い制服だな……と、改めて思う。
(誰か来る前に、着替えた方がいいか……)
 魅恵は早速、制服に着替え始める。ダンガリーシャツとジーンズ、それに靴を脱いで、下着姿になる。ロッカーの扉に付いている鏡には、スリムで均整の取れた、スポーツタイプのシンプルな下着姿の、可愛い女の子が映っていた。
「結構、可愛いな……」
 自分の下着姿に対する率直な感想を、魅恵が呟いた直後、更衣室にカンナが入って来た。
「ミケちゃん、もう来てたんだ!」
 突然のカンナの出現に驚きつつ、自分の下着姿に羞恥心を覚えた魅恵は、ブラウスを取り出そうとしていたバッグで、慌てて身体を隠す。
「あ、お早うございます!」
「――ミケちゃん、女の子同士なんだから、恥ずかしがる事も、隠す事も無いと思うけど……」
 魅恵の行動や表情から、魅恵の心理状態を察したカンナは、そう言いながら苦笑する。
「いや、その……隠してたんじゃなくて、バッグからブラウスとオーバーニーソックスと靴、取り出そうと思っただけで……」
「そうなの? 身体、隠した様に見えたんだけど」
「そんな訳無いじゃないですか、気のせいですよ!」
 魅恵は自分の言葉通り、バッグの中から、ブラウスなどを取り出した。そして身体を隠す為に、魅恵は急いでブラウスを羽織る。
 靴下を脱いで、紺色のオーバーニーソックスに履き替え、同じく紺色のワンピースを、穿く様に着る。下着姿よりはましだとはいえ、スカート姿というのは下半身が心許ないなと、魅恵は思う。
「サッシュ以外の小物は、エプロン着る前に身に着けた方が、楽だよ」
「あ、はい」
 カンナに言われた通り、クロスタイやカフス、カチューシャなどを身に着けた後、フリルだらけのエプロンを、魅恵は装着する。
「着替え終わった?」
「はい」
「ちょっと見せて」
 魅恵はメイド服姿を見せる為に、カンナの方を振り向いた。
「!」
 驚きの余り、思わず魅恵は息を飲む。下着姿のカンナが、いきなり魅恵の視界に、飛び込んで来たからである。
 カンナは先程の魅恵同様、下着姿になっていたのだ。シンプルな下着の魅恵や晶と違い、少し装飾が派手な白い下着を、カンナは身に着けていた。
 魅恵や晶と違うのは、下着のタイプだけでは無い。下着の中の身体……特に胸が、根本的に違っていた。カンナの胸は、グラビアアイドルクラスの、見事な胸なのだ。
 その、大きな胸を揺らしながら、カンナが自分の方に迫って来たので、魅恵は狼狽える。
「カチューシャが曲がってるよ、直してあげる」
 魅恵の目の前まで来たカンナは、手を伸ばし、魅恵の頭の上のカチューシャを直した。カンナの胸が、魅恵の胸に触れる。魅恵は、目のやり場に困る。
 カンナは、魅恵の顔が紅潮し、不自然に胸から目を逸らしている事に気付く。
「そっか……ミケちゃんレズだから、おっぱいとか見ると、照れちゃうんだ」
 自分がカンナの胸を見て、照れているのを言い当てられ、魅恵はリアクションに困る。
「晶に、変わった趣味の事、聞いた?」
「――一応」
「だったら、ミケちゃんが他の女の子とエッチな事しても、別に怒ったりしないどころか、晶は喜ぶって、知ってる訳ね?」
 魅恵は、頷いた。
「だったら……いいよね」
「え?」
 カンナは、魅恵の顎に手を添えて、少し上に傾けると、魅恵にキスした。唇を被せる程度の、軽いキスを。
 魅恵は狼狽しつつも、カンナの身体を押して遠ざけ、唇を離した。
「カンナさん、駄目です!」
「何で? 私ってミケちゃんから見て、魅力無いかな?」
 キスを拒絶されたカンナは、ちょっと不満そうに、魅恵を問い詰めた。
「そんな事無いですけど……」
「じゃあ、いいじゃない? 晶だって、喜ぶんだから」
「それは、あの……後でカンナさんが、後悔する事になるから……」
 後で自分が男だと知ったら、女だと思い込んでいたカンナが、傷付く事になると思ったので、魅恵はカンナの誘いを、断り続ける。
「何で? 別に後悔なんてしないよ。晶の彼女とエッチするのなんて、珍しくも無いんだし」
 普通の人が聞いたら驚く様な事を、カンナは平然と言い切る。
「――それに、もうすぐ仕事だから。カンナさん、まだ着替えて無いし」
「大丈夫よ、あと十五分ちょっとあるし、着替えるの、五分もかからないから」
「でも……」
「何も、最後までしようっていう訳じゃなくて、キスして、身体をちょっとだけ……ね」
 カンナは魅恵の身体を抱き寄せ、少し強引に唇を合わせた。そして、唇を離すと、ブラを上にずらして、大きくて形も良い胸を、露出させる。
 そのまま、右の乳房に魅恵の口元が来るように、カンナは魅恵の頭を抱き寄せた。晶のモノよりも、段違いに大きいカンナの胸に、目を奪われた魅恵は、カンナのなすがままに、ボリュームのある右胸に顔を埋める。
「吸って……」
(いいのかなぁ?)
 少しだけ罪悪感を感じたものの、魅惑的なカンナの胸に、顔を埋めてしまった魅恵は、カンナの乳首に口を付けてしまう。そのまま、軽く何度か舌で舐め、口の中で転がした後、魅恵、乳首を、強く吸いはじめる。
 カンナは軽く呻きつつ、魅恵の右手を左乳房に誘う。愛撫を催促するかの様に、豊かな乳房に魅恵の掌を押し付ける。
 魅恵は右手で、カンナの左胸への愛撫を始める。
(晶のより、柔らかいな……)
 胸が柔らかくて大きいという事は、単に脂肪分が多いというだけなのだが、男の魅恵にとって、やはり大きくて柔らかな胸というものは、それだけで魅力的な存在なのだ。魅恵は次第に、カンナの胸への愛撫に、のめり込んで行く。
 右胸の乳首から唇を離し、胸の谷間を舌で舐めながら唇を左胸に移動させる。そのまま、乳首ごと胸の先端を口に含み、口の中で舐め回す。
 左手は、右胸を揉み始める。重みがあり、手に余る大きさの胸を、力の加減を微妙に変えながら、揉み続ける。乳首を指で挟んだり、捻ったりする。
 カンナの息が、次第に荒くなって来たので、魅恵はカンナの顔を見上げて、様子を確認する。顔を上気させたカンナと目が合い、魅恵は少し、気まずい思いをする。
「ミケちゃん上手い……これ以上続けると、最後までしたくなっちゃいそうだから、この辺でいいよ」
 魅恵は頷いた。少し、残念なような気がしたが、これ以上の事は、しない方がいいなと思い、カンナの胸から、顔と手を離した。
「まだ十分はあるね。今度は、私がしてあげる」
 壁の時計で時間を確認してから、カンナは言った。
「え、いいですよ、俺は……」
「俺って……ミケちゃんってホントに、男の子みたいね」
 少し笑いながら、カンナは魅恵の身体を半回転させ、後ろから抱き締めた。そのまま、右手をエプロンとワンピースの間に、潜り込ませる。ボタンを簡単に外して、ワンピースの中に手を入れたカンナは、ブラをずらして、直に魅恵の左胸を、愛撫し始める。
「ん……まだ、ちょっと硬いかな?」
 魅恵の胸の感触を口にしつつ、ワンピースの裾を捲り上げたカンナの左手は、魅恵の下腹部を軽く撫でた後、あっという間にショーツの中に、潜り込んで来た。かなり、慣れた感じだなと、魅恵が感じる程に、カンナは手際が良い。
「うちの制服、ストッキングじゃないから、こういう事がしやすいのよね」
 カンナは楽しそうに言った。
「カンナさん……こんな事……駄目っ!」
 魅恵の抗議を無視して、カンナは愛撫を楽しみ続ける。右手は魅恵のワンピースの胸を開き、左だけで無く、左右の胸を揉み、乳首を指先で弄ぶ。
 左手の指先は、ショーツの中で秘裂を割り、内壁を撫でる。クリトリスの皮を剥き、優しく刺激する。
 愛撫を受けた魅恵は、顔を上気させ、軽く喘ぎ始めている。
「そうやって感じてる時の顔は、ちゃんと女の子だよね。喋り方とか、男の子っぽいけど……」
「え?」
「――私はレズじゃないから、女の子っぽい子よりも、ミケちゃんみたいにボーイッシュな子の方が、好みなんだ……」
 もう少しで、魅恵は絶頂を迎えそうだったのだが、自分を女の子だと思い込んでるカンナに、自分を愛撫させている罪悪感が、次第に強くなってきてしまった。カンナとの行為を打ち切ろうと、魅恵は決意する。
「カンナさん……もうそろそろ、着替えないと」
「――そうだね」
 カンナは、まだ下着姿だった。開始時間まで五分を切ったので、流石に着替えないとまずいなと思ったカンナは、魅恵を手放した。
 魅恵を自分の方に向かせて、軽く抱き締め、カンナは魅恵と唇を重ねる。舌を入れない、軽いキスである。
「続きは、また今度ね……」
 カンナの言葉に、魅恵は思わず、頷いてしまう。しまったと思いながら、魅恵は服の乱れを直し始める。
 慣れているのだろう、カンナは魅恵の傍らで素早く制服を着終えて、あっという間にメイド服姿になる。
「さーて……お仕事、お仕事!」
 そう言いながら、元気良く更衣室を後にして、フロアの方に向かうカンナの後を、魅恵はついて行く。

 ウェイトレスの仕事は、オーダーなどの作業が電子化されているとはいえ、ハードなものだった。午前十時の開店から、その日の食材が切れるまでという、少し変則的な営業形態をとっているハーベストは、遅くとも午後八時過ぎには閉店するペースで、客が途切れずに訪れる人気店なのである。休憩時間以外は、殆ど身体を休める暇が無い。
 女物の服を着たまま、人前で働く事には、魅恵はすぐに慣れてしまった。正確には、女物を着ている事を恥ずかしがる程の余裕が、無かったというべきだろうか。
 それ程に、ハーベストは流行っていて、仕事が忙しかったのである。
「ハードでしょう? うちのママ、料理だけは上手いから、お客さん多いんだ。ミケちゃんが来てくれなかったら、私……死んでたかも」
 休憩時間中に、カンナが笑いながら言った。
「普段は水曜が定休日なんだけど、駅前通りの商店会の取り決めで、春休み期間中は休みが無いんだ。私は何日か休めるけど、ミケちゃんは四月五日まで、毎日だよね、大丈夫?」
「――何とか」
「頑張ってね。まぁ、うちのバイトが合ってる様なら、新学期からも続けて欲しいくらいなんだけど」
「学校があるから、無理ですよ。新学期が始まったら、色々と忙しくなるだろうし」
「そっか、ミケちゃん高校生だもんね……女子高?」
「共学ですけど……何で?」
「いや……レズの子って、女子高行く子が多いっていうから」
 そういえば、晶も女子高だったなと、魅恵は思う。
「ミケちゃんくらい可愛かったら、男の子にも、もてるんだろうねー」
「そんな……全然、もてませんよ」
 本当は、魅恵は女の子からは告白された事は、余り無いのだが、男子生徒からは、何度も口説かれた事があったのだ。魅恵を女の子だと間違えて口説いた者もいれば、男の子だと分かって口説いた者もいた。無論、全部断ったが。
「そうなの?」
「俺……じゃなくって、私はともかく、カンナさんみたいに魅力的な人が、うちの学校通ってたら、男子にもてたと思いますよ」
 男の子にもてないというのは、嘘だが、カンナが魅力的だというのは、本音である。
「ミケちゃん、結構、口が上手いね。そうやって女の子誉めて、モノにしちゃったり、してるんだ」
「してませんよ! 俺……じゃなくって」
「一人称、無理して私にしなくてもいいよ、ミケちゃんが自分の事、俺っていうの、似合ってるから……。お客さんの前とかでは、困るけどね」
 魅恵は、頷く。
「俺……恋人とか出来たの、晶姉が初めてなんです」
「――まぁ、女の子同士の人は、相手探すの、普通の人より難しいだろうからね。普通の人の上、相手がいた事無い私が言うの、変かもしれないけど……」
 カンナは、魅恵を見詰める。
「ミケちゃんが、ボーイッシュな女の子じゃなくって、女の子みたいに可愛い男の子だったら、良かったのにな……。そしたら、彼氏になって貰うのに」
「え?」
「冗談よ。ミケちゃん女の子だもんね。さっき確認済みだし」
「からかうの止めて下さいよ、カンナさん」
 男の子だったら良かったと言われて、少し魅恵は、気分が良かった。
「ま、彼氏にはなって貰えないけど、その内、ちゃんと相手してね。晶に見せながらでもいいし、晶抜きでもいいから」
「そ、それは……」
「二十年間、恋人無しのお姉さんを、慰めると思って、相手してよ。それに……」
「それに?」
「晶の彼女になった以上、私に抱かれるのは、義務みたいなもんなの。レズでも無い私が、女同士のセックスの気持良さ知っちゃったの、晶のせいなんだから」
「義務……ですか?」
「冗談。本当に嫌なら、無理にとは言わないわよ。だけど、断る時は、上手く断ってね、これでも結構、傷付き易い方なんだから」
 カンナは、冗談めかして言った。
「男に相手にされない上に、レズの女の子にまで相手にされないなんて事になったら、自信が無くなっちゃうもんね……」
 断るのも傷つけるし、断らないのも傷つける事になるなら、自分は一体、どうすればいいんだろうと、魅恵は思う。


          ☆          ☆


 「少年少女ミケ」、DLsiteで発売中!

《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)6

「晩御飯、好きな物奢ってあげるから、許してよ……」
 ベッドの上で、うずくまっている魅恵の、髪の毛を弄りながら、隣に寝転がっている晶は、甘えるように許しを請っていた。
「俺の処女膜の価値って、晩御飯と同じなのか……」
 まだ、破瓜の痛みが後を引いているせいで、魅恵の気分と機嫌は、最悪だった。
「謝ってるんだから、ひねくれるの止めてよ」
「――だって、今度は俺が男になってする筈だったのに、晶姉ばっか好き勝手にやるんだもん、ズルイよ」
 拗ねた子供の様に、魅恵は頬を膨らませる。
「それは、ほら……バイト終わるまで、ミケちゃんは男に戻れないから、それまではミケちゃんが女の子のままでするのは、仕方ないじゃない」
 優しく頬を撫でながら、晶は魅恵をなだめる。
「――バイトが終わって、俺が男に戻ってから暫くは、男のままするからね。晶姉が女の子の俺を抱いたのと同じ回数、俺が男の身体になって、晶姉を抱くんだから!」
「分かったよ。ちゃんと、あたしが抱いた数、覚えておいてね」
「――とりあえず、今は二回」
「はいはい。じゃ、御飯食べに行こうよ。奢ってあげるから」
 魅恵は頷き、起き上がる。股間の痛みのせいで、かなり動きがぎこちない。
「痛いの?」
「――痛い。これって、後引くの?」
「大丈夫。明日になれば、痛く無くなってるから」
「晶姉も、そうだった?」
「次の日には、残らなかったよ。高一の頃の彼女に、指でされた時だから、ミケちゃんと同じだね」
(四年前か……)
 服を着ながらの、晶の答えを聞いて、魅恵は四年前の晶を思い出してみる。四年前……魅恵が小学六年生だった頃、葛城家の近くで晶と一緒にいるのを見かけた、長い黒髪が印象的な、魅力的な少女の姿が、魅恵の心の中に蘇る。
「ひょっとして、その高一の頃の彼女って、長い黒髪の子?」
 魅恵に問われた晶は、意外そうな顔で頷く。
「家に遊びに来た時とかに、ミケちゃんに見られた事とか、あったな……そういえば」
(手を繋いでたりして、仲が良い友達なんだなって、あの頃は思ってたんだけど……彼女だったんだ、あの子)
 微妙に複雑な気分に、魅恵は陥る。恋人の過去の恋愛や性体験の相手に関する事など、知って良い気分がするタイプの人間では、魅恵は無かった。
(まぁ、でも……相手が男じゃないだけマシか。一応、一般的な意味合いでなら、晶姉って処女な訳だし)
 そう自分に言い聞かせた魅恵は、一応……念の為に、晶に確認してみる。気まずそうに、目線を不自然に逸らしながら。
「晶姉って、その……男相手の経験が無いって意味の処女だと、処女……なんだよね?」
 魅恵の問いに、晶は頷く。
「あの子にされたせいで、処女膜は無いんだけど、男相手の経験が無いって意味なら、処女だよ」
 過去の交際相手とのセックスで、相手の指や疑似ペニスにより、晶は幾度と無く膣を貫かれている。だが、男相手のセックスの経験が無いという意味では、晶は確かに処女である。
「じゃあ、俺が男に戻ったら、晶姉の本当の意味での処女、俺が貰うからね、絶対に……約束だよ!」
「約束するよ、あたしの本当の意味での処女、ミケちゃんが男に戻り次第、あげるって」
 晶の言葉を聞いて、魅恵は嬉しそうに微笑む。
「やっぱり、ミケちゃんも処女の方がいいの?」
 微笑んだ魅恵を見て、そう思ったのだろう。晶は魅恵に尋ねる。
「それは……まぁ、正直言えば、嬉しいけど。でも、本当に晶姉って、男相手の経験無いの?」
「無いよ。男とはセックスどころか、キスも経験無いし……」
「――俺、男だけど……」
「あ、ご免。ミケちゃん以外とは経験無いに、訂正!」
 そう言うと、晶は笑い出した。気まずさを誤魔化す様に、魅恵を抱き締めながら。
 自分が晶に男として認識されていない様な気がして、魅恵は少しだけ、嫌な気分になった。

 翌朝、痛みは完全に消えていた。痛みが残っていたら、バイトに支障をきたすかもしれないと、心配していたので、魅恵は安堵する。
 朝食を終えてシャワーを浴び、バイトに行く準備を整えていた、午前八時五十分頃、魅恵は晶からの電話を受けた。魅恵の痛みが引いたかどうか、心配しての電話である。
 大丈夫だと魅恵が言うと、晶も安心したようだった。晶が心配してくれていた事が、素直に嬉しかったのだが、バイトに行く時間が来たので、他の話題には移らず、魅恵は電話を切った。

 午前九時十分、魅恵は破魔崎駅のホームにいた。坂崎駅までは坂崎線で二十分、ハーベストまでは、駅から五分もかからないので、時間的には余裕である。初日なので、念の為に、少し早めに家を出たのだ。
 服装は、ジーンズにダンガリーシャツ、スニーカーという、殆ど普段通りの格好である。ブラウスやパンプスなどは、背負ったリュック型のバッグの中に、入っているのだ。
 元々、目立つ顔立ちをしている上に、周りは、スーツ姿のサラリーマンが殆どなので、カジュアルな格好の魅恵は、異常に目立つ。不思議と、周りに女性の姿は無い。
 電車がホームに停車したので、魅恵は乗車する。通勤ラッシュの時間は、過ぎているのだが、車内は割と混んでいた。魅恵はドアの端をキープし、取っ手に掴まった。
 そのまま、自動ドアが閉まり、電車は走り出した。魅恵は、窓の外の景色を眺め、時間を潰す事にした。

 次の駅で、客が大量に乗り込んで来て、電車の中は、一気に満員になった。魅恵はドアに身体を押し付けられ、身動きが取れなくなる。
 坂崎駅は終点なので、身動きが取れなくても、降り損う事は無いのだが、魅恵が押し付けられている方のドアは、終点まで開かない。終点まで、この苦しい状態が続くのかと思うと、魅恵は憂鬱になる。
 魅恵の身動きが取れなくなって、二分程が過ぎた頃、魅恵を、更に憂鬱にさせる事態が起った。魅恵の尻を、誰かが撫で回し始めたのだ。
(ち……痴漢!)
 尻を撫で回す誰かの手を掴み、警察に突き出すか、自力でぶっ飛ばすかしようと、決意を固める直前、魅恵の頭の中に、妖シ屋の女主人の言葉が蘇って来る。
「三つ目は……女になってる時は、警察沙汰になるような真似をしない事。警察が動いて、うちの店が調べられるようになったら、困るから」
(そうだ、痴漢を警察に突き出しても、ぶっ飛ばしても、警察沙汰になっちゃう……)
 女の身体になっている時は、警察沙汰になる様な真似は、避けなければならない事を、魅恵は思い出したのだ。
(それに、考えてみれば、警察に訴えたり、被害届を出したりしようにも、身体の性別が変わってしまってる今の俺には、無理かもしれない……。下手したら俺の方が、警察に怪しまれる事になるかもしれないな)
 そんな不安が頭を過り、魅恵は警察沙汰になる程の騒ぎを避ける為、自分の尻を撫でていた誰かの手を払い除け、自分の身体から離しただけで、大きな騒ぎになるような真似は、しない事にした。
(これで、痴漢が収まればいいんだけど……)
 そんな魅恵の期待は、裏切られた。痴漢は魅恵の事を、手をどけるだけで、触っても騒ぎ立てない女の子だと、認識したようなのだ。
 再び尻を触り始めた手を、魅恵は迷わず、手で払い除ける。その後、尻に伸びて来た誰かの手を、魅恵が払い除けるという流れは、三回繰り返されて終わる。
 終わったのは、痴漢が触るのを、諦めたからでは無い。魅恵の身体を触りに来る手が、突然、四本に増えたからである。
 痴漢の手を払い除けていた魅恵の両手は、後ろに回したまま、痴漢の二本の手で、がっしりと掴まれた。魅恵は身体を電車のドアに押し付けられたまま、両手を後ろ手で拘束されてしまったのだ。
 身動きも取れず、手も自由に動かせなくなった魅恵の身体を、魅恵の手を拘束していない二本の手が、這い回り始めた。痴漢は二人いて、各々が片手で魅恵の手を掴み、もう片方の手で、魅恵の身体を撫で回している。
 魅恵は元々、女の子みたいな外見をしている為、男の身体の時も、結構痴漢にあっていた。そういった場合、即座に痴漢を警察に突き出すか、駅のホームで半殺しの目に遭わせるかの二択だったので、軽く触られる以上の被害に、魅恵は遭った事が無かったのだ。
(俺、このまま、男に痴漢され続けるの?)
 魅恵の全身に、悪寒が走った。
(冗談じゃ無い! 逃げないと……)
 ハリウッド映画で、警官に手錠をかけられる直前の犯人のように、背中で両腕を固められた魅恵は、身体をよじって痴漢から逃れようとする。しかし、二人の痴漢に後ろから、身体を使って押さえ込まれ、電車のドアに身体を押し付けられているので、魅恵は身動きが出来ない。
 丁度、二人は魅恵を囲む位置にいるので、電車の他の客からは、魅恵の姿は、見えなくなっている。魅恵が抵抗出来ず、周りからも行為が見えなくなっている事を確信した痴漢達は、遠慮無く魅恵の身体を、触っている。
 右後ろにいる男が、魅恵の下半身を触り、左後ろにいる男が、魅恵が身をよじった際、ドアと魅恵の間に出来た隙間から手を差し入れ、左胸を触っている。
 最初は、尻を撫で回し、割れ目に指を這わせていた手が、次第に下に下がり、太股の間に、指を滑り込ませようとする。魅恵は足を閉じて、侵入させまいとするが、弾力のある太股の肉は、滑り込んで来る指を、迎え入れてしまう。男は手に力を入れ、魅恵の股を割って、手を完全に、魅恵の股間に差し入れる事に、成功する。
 少しの間、太股をさすっていた手は、股間に狙いを変え、デニムの生地と下着越しに、魅恵の陰部の下の辺りを、撫で始める。
 無論、その間にも、左胸は揉まれ続けている。揉みながら、シャツの生地越しに、乳首を探り当て、指で摘んで刺激を加える。
(き、気色悪ぅ……)
 魅恵は、下半身と胸に加えられる刺激が気持ち悪くて、吐きそうになる。男に触られるだけでも気持ち悪いが、見知らぬ他人に触られるのだから、気持ち悪い上に不安でもあるのだ。
 再度、身体に力を入れ、逃れようとしてみるが、身体も腕も、男達に押さえ付けられているので、魅恵は逃れられない。それどころか、逃げようと身体を捻ったせいで、ドアとの間に隙間が出来てしまい、左胸を触っていた、左後ろの痴漢の左手が、自由に移動出来るようになってしまった。
 魅恵は身体をドアに押し付け、隙間を無くそうとするが、腕を後ろに引っ張られてしまい、隙間を無くす事が出来ない。左後ろの痴漢は隙間を利用して、より大胆に、魅恵の身体を触り始めた。
 まず、ダンガリーシャツのボタンを外して、手をシャツの中に、忍び込ませる。そのまま、スポーツタイプのブラの上から、痴漢は左胸を揉み始める。
 比較的生地の厚い、ダンガリーシャツの上から触られた時よりも、愛撫の感覚が、はっきりと魅恵に伝わって来る。不快さと、それ以外の微妙な感覚が混ざり合った、感覚が。
 そのまま十回程、左胸を揉み続けた後、痴漢はブラの下の方を掴み、たくし上げる。ブラは魅恵の両胸の上に、乗る様な形になる。
 痴漢の手が、左胸を直に触り始める。少し硬めだが、程良い大きさの魅恵の乳房を揉んだり、乳首を指で挟んだり、細かく振動させて刺激したりと、好きな様に弄び始める。
 直に触られたせいで、愛撫の刺激は魅恵の脳に、より明確に伝わり始めた為、魅恵の本能は、意志とは逆の生理的な反応を、身体に返す。乳首が起ち、硬くなっていくのが、魅恵自身にも分かる。
(何で……起っちゃうんだよ?)
 魅恵は自分の身体の反応が、恨めしかった。男の身体の時にも、別にエッチな事を考えている訳でも無いのに、無意味に股間が起ってしまう事があった。女の身体も、意志とは無関係に、反応してしまうものなのかなと、魅恵は思う。
 右後ろの痴漢も、魅恵とドアの間に、隙間が出来た事に気付いたのか、太股の間から手を引き抜き、魅恵の左側から、前に手を回して、魅恵の股間を触り始める。
 太股の間から、手を差し込んでいた時は、陰部の下の辺りまでしか、手が届かなかったようなのだが、今は手が届くので、露骨に魅恵の陰部の上を、触っている。
 数秒間、デニムの生地越しに陰部を触っていた痴漢は、ジーンズのファスナーを降ろし始めた。
(そ、それだけは、嫌!)
 見知らぬ他人の男に、陰部を触られる事の嫌悪感は、魅恵の耐えられる限界を超えていた。堪え切れずに、魅恵は声を上げそうになってしまい、大きく息を吸い込む。
「間もなく~終点の~坂崎~坂崎~!」
 突如、電車が終点の坂崎駅に辿り着く事を、社内アナウンスが伝えた。魅恵の後ろの痴漢達が、軽く舌打ちをして、手を引っ込める。
 魅恵は、痴漢達の手が自分から離れた事に、安堵した。自分が声を上げずに済み、警察沙汰を避けられた事にも。
 魅恵は、やっと自由になった両手で、数センチ下げられたファスナーを上げ、ブラとシャツのボタンを、元に戻した。程なく、電車は坂崎駅のホームに滑り込み、魅恵の前のドアが、勢い良く開いた。
 背後からの強烈な圧力で、魅恵は電車の中から押し出された。ホームに出た魅恵は、即座に後ろを振り向き、痴漢の姿を確認しようとしたが、そこには多数のサラリーマン風の男達がいて、誰が痴漢だったのか、全く分からなかった。
「死ねよ、変態!」
 魅恵は、吐き捨てる様に、呟いた。自分が少し汚れた様な、嫌な気分に、魅恵は苛まれる。
「まぁ、晶は気にしないんだろうけど……」
 自分の彼女を、他人に抱かせて楽しむ様な晶の場合、魅恵が痴漢に遭っても、全く気にしないだろう。それどころか、下手すれば喜ぶかもしれないのだ。
 もっとも、彼女の晶が平気でも、魅恵が平気な訳では無い。朝っぱらから痴漢に襲われ、魅恵は最低の気分になってしまっていた。
 そんな魅恵の周囲に、突如、いい匂いが漂って来る。女性が身に纏う匂い……香水の匂いである。
 最初は、いい匂いかなと思ったが、香水の匂いが数種類混じり始めたので、すぐにいい匂いというより、単なる強烈な匂いになってしまった。何だろうと思い、後ろを振り向いた魅恵は、沢山のOL風の女性や、カジュアルな服装の女の子が、歩いている光景を目にする。
「あれ? 女の人……」
 そこで初めて、坂崎線には女性専用車両が三両も用意されていた事を、魅恵は思い出した。ラッシュ時でも、余裕を持って、女性を収容出来るので、殆んどの女性客は、女性専用車両に乗るのが、当たり前だったのである。
「そうだ……俺、女性専用車両に乗れば良かったんだ!」
 身体が女性化しているとはいえ、魅恵の中身は男性なのだ。それ故、女性専用車両に乗ろうという考えが思い浮かばず、魅恵は普通車両に乗り込んでしまった。
「次からは、女性専用車両に乗ろう。そうすれば、痴漢なんかに、遭わずに済むし」
 ほっとしたように呟きつつ、魅恵は改札の方に向かって、歩き出した。もっとも、女性専用車両に乗れば、痴漢に遭わないという考えが、甘かったという事に、魅恵は後で気付くのだが……。


          ☆          ☆


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《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)5

 帰りがけ、坂崎市の繁華街にあるディスカウントショップで、千円の黒いパンプスと、安売りされていたインスタント食品を買って、魅恵は家に帰った。家には、誰もいない。
 去年の夏、父親の沖縄転勤に合わせて、母と二つ年下の妹……伊月(いつき)は、沖縄に引っ越してしまったのだ。魅恵を一人だけ、破魔崎に残して。
 一人だけ破魔崎に残されたのは、魅恵が地元では、偏差値の高い進学校……破魔崎高校に通っている為、せっかく進学校に入ったのだからと、両親が転校させたがらなかったせいである。魅恵自身は、沖縄には住んでみたかったので、少し残念に思っているのだが。
(母さんや伊月が、服とか靴を置いて行ってくれたら、良かったのにな……)
 母も伊月も、服や靴を、残らず沖縄に持って行ってしまったのだ。置いて行ってくれていたのなら、サイズが合わないかも知れないが、無いよりは増しだろうなと、魅恵は思ったのである。
 家の固定電話に、留守電が入っている。ボタンを押すと、晶の声が、再生された。
「家に帰ったら、連絡頂戴!」
 晶らしい、シンプルな伝言だった。
(そういえば、携帯……オフにしてたんだっけ)
 携帯電話が繋がらない上、メールの返信も無い事から、魅恵が携帯電話の電源を、オフにしたままなのだと晶は気付いて、家の電話の方に連絡を入れておいたのだろう。魅恵は早速、晶の携帯に連絡を入れ、バイトが決まった事や、明日から働き始める事などを告げる。
 自宅にいた晶は、今から魅恵の家に行くと言った後、電話を切った。程なく玄関の呼び鈴が鳴る……両手にバッグを持った晶が、魅恵の家を訪れたのだ。
「どうしたの、それ?」
「ミケちゃんとサイズが同じくらいの友達の家回って、要らなくなった女物の服、貰って来たんだ」
「女……物?」
「毎日、男物ばっかり着てたら、怪しがられるかも知れないじゃない?」
「――まぁ、それは……そうだけど」
「ちゃんと、女物も着ないと駄目だよ」
 晶は有無を言わさず、魅恵を引きずるように、魅恵の部屋に行き、バッグの中から二十着程の服を取り出し、床に広げた。スカートにブラウス、トレーナーにショートパンツ、ワンピースにジーンズ、タンクトップにキャミソールなど、様々な種類の服が、揃っていた。
「キャミソールはいらないよ、幾ら何でも」
「そう? 色黒のミケちゃんには、こんな感じの黒のキャミソールが、似合うと思うんだけど」
 黒いキャミソールを手にとって、魅恵の身体に当ててみながら、晶は残念そうに呟く。
「取り合えず、サイズが合うかどうか、一通り着てみてよ」
「今?」
「当然」
 魅恵は、晶が持って来た服を、一通り試着してみた。殆どの服のサイズは、魅恵にぴったりだった。
 当初は着るつもりが無かった黒のキャミソールを、晶のしつこい勧めもあり、魅恵は一応、身に着けてみる。デニムのショートパンツを穿いた上で。
 全身が映る鏡の前で、魅恵はポーズをとってみる。すると、晶の言っていた通り、黒のキャミソールは魅恵自身も意外に思う程に、似合っていた。
「凄いね、全部ぴったりだよ」
「ミケちゃんの身体のサイズ、大体分かってるからね」
「何で?」
「一回抱けば、身体のサイズくらい分かるよ」
「――そうなの?」
「他の人は知らないけど、あたしは分かるんだ」
 鏡の前にいる魅恵の後ろに立った晶は、魅恵のウエストに手を回した。
「――ミケちゃんのウエストは、六十センチ弱」
 そのまま、手を上に移動させ、胸を揉み始める。
「バストは……八十三のCカップ」
「――晶姉って、鏡の前でHするの、好きなの?」
 数時間前、初めて晶に手を出されたのも、鏡の前でだったので、そうなのではないかと、魅恵は思ったのだ。
「鏡に映ってる自分達を見ながら、エッチな事するの、楽しいでしょ?」
 ラブホテルなどには、自分達の行為を見ながら楽しむ為に、鏡張りの部屋があるという事位は、魅恵も知っている。
「好きな子がエッチな事をされて、悶えてるのを見るの、凄く好きなんだよね、あたし」
「――そうなんだ」
「本当は、自分で相手してると、見るのもするのも中途半端になるから、見て楽しみたい時は、女相手でも大丈夫な女友達とかに、彼女を抱いてもらう事にしてるんだけど……」
(ひょっとして、「自分の彼女を、他の人に……」って、カンナさんが言ってたのって……。彼女を他の人に抱かせて、それを見て楽しむって事なの?)
 魅恵はカンナの言っていた事の意味を、理解した。
(カンナさんが、そういう晶姉の趣味を知ってるって事は、ひょっとしたら……)
 晶が言う所の、女相手でも大丈夫な女友達の中に、カンナが含まれているのではないかという疑問が、魅恵の頭の中に浮かんで来る。
「ひょっとしたら晶姉、カンナさんに昔の彼女を?」
「あ、カンナに聞いたの? カンナにも彼女の相手、頼んだ事あるんだ」
「やっぱり……」
 カンナは処女とは言っても、女同士のセックスの経験はあったのだ。女の子とは経験済みだからこそ、「まだ経験無いのよね」の後に、「男とは……」と言葉を付け足していたのだろうと、今になって魅恵は理解する。
 もっとも、レズでは無いカンナにとって、女の子同士のセックスの経験は、一種の自慰行為の様なもので、セックスの内には入らないのかも知れないなと、魅恵は思う。
「カンナはレズじゃないから、高校の頃は、頼んでも断られてたんだけど、大学に入ってからは、OKして貰えるようになったんだよね。今は結構、女の子とエッチするの、楽しんでるみたいだよ」
(確かに、そうかもしれないな)
 カンナの胸から、手を引っ込めた時、カンナが残念そうな表情を浮かべていたのを、魅恵は思い出した。
「ひょっとして……晶姉って、カンナさんともした事あるの?」
「無いけど……ミケちゃんが付き合ってくれなかったら、案外……カンナに相手して貰って、欲望を満たしてたかも」
 胸を揉んでいた右手が、下に下がり、ショートパンツの上から、魅恵の股間を撫で始める。
「ねぇ、その内でいいから、女の子の身体のままカンナとHして、あたしに見せてくれない?」
「――駄目」
「何で?」
「晶姉、俺と……ちゃんと付き合うんだろ?」
「うん」
「だったら、その内……カンナさんにも、俺が男だってばれるよね?」
「まぁ、そうだろうね」
「――女だと思ってHした相手が、後で男だって知ったら、傷付くんじゃない? 晶姉だって、そんな目にあったら嫌だろ?」
「そっか……」
 晶は、少し考え込む。魅恵が女の子なら、間違い無く、カンナは喜んで、魅恵の相手をするのだろう。しかし、男だと分かった上で、カンナが魅恵の相手をしてくれるかどうかは、晶にも分からなかった。
「ま、取り敢えず、その事は後で考えるとして……」
 キャミソールの薄い生地の上から、魅恵の胸と股間を愛撫していた晶は、ショートパンツのボタンに手をかけ、外した。
「――するの?」
 後ろを振り返って、魅恵は晶に聞く。
「嫌?」
「嫌じゃないけど……男と女、交互にしようって決めたじゃん! 次は、俺が男でする筈だよ!」
「バイトが終わるまで、男に戻れないんだから、仕方が無いじゃない」
 そう言いながら、晶は魅恵を本格的に脱がし始め、あっという間に、全裸に剥いた。
「ベッドに寝て」
 魅恵は晶に言われた通り、自分のベッドの上に、仰向けに寝転がった。晶は、持って来た服の中に紛れ込ませておいた革製のベルトを手に取り、こっそりベッドの脇に置いたのだが、魅恵は気付かなかった。
 晶は、魅恵の上に覆い被さり、唇を重ねる。少し右半身を浮かせ、右手で魅恵の左胸を愛撫し、左手は魅恵の右手を、握りしめている。
 魅恵も、左手で晶の右胸の膨らみを、軽く揉み続けている。時折、指先で乳首を弄ったりしながら。
 舌と唾液が絡まり合う音と、ベッドが軽く軋む音がする。魅恵への愛撫を始めながら、晶は着衣を脱いでいったので、晶の服は、ベッドの周囲に脱ぎ散らかされている。
「あ……」
 唇を離し、魅恵が声を漏らす。腰を浮かせた晶に、右膝を股間に当てて動かされ、魅恵は敏感な部分を刺激されたのだ。
 柔らかな毛と、十分に湿った陰唇の感触が、晶の膝に伝わって来る。
「こんなに濡れてる。ミケちゃんって、感じ易い方だね」
 膝頭で股間への刺激を続けながら、器用に右足を使って、晶は魅恵の股間を割る。そのまま、身体を下にスライドさせ、濡れている魅恵の股間に、顔を埋める。両手は魅恵の胸に移動し、揉みしだく。
 晶は、この体位を好んでいる。胸と股間を同時に責められる、この体位を続けていると、晶自身も感じて、昂ぶってしまう。
 自分が責められるよりも、責めたり、自分の好きな女が悶えてるのを見て、晶は昂って行くタイプなのである。無論、愛撫される事も嫌いでは無いのだが、好きな女が責められて、感じている姿を晒すだけでも、晶は感じ……濡れてしまうのだ。責めるのが自分であろうが、他者であろうが。
 そのまま五分程、晶は魅恵を責め続ける。途中、軽くアナルに舌を這わせたりしながらも、念入りに魅恵の股間を責め続けた後、魅恵の膣口の様子を、晶は確認する。
 魅恵のモノは口を開け、ひくつき始めているし、粘液を溢れ出させている。息遣いも、かなり荒くなっている。
「うつ伏せになって」
 既に、程良い快感を味わい続けている魅恵は、更なる快感を期待し、素直に晶の言うがままになる。ベッドの上を転がって、魅恵はうつ伏せの姿勢をとる。
 うつ伏せになった魅恵の背中を舐めながら、手を魅恵の身体の下に滑り込ませ、晶は胸と股間への愛撫を続ける。
「気持ちいい?」
「――うん」
「イキそう?」
 魅恵が素直に頷いたのを確認すると、晶は両手を魅恵の身体から離し、全身を魅恵の身体に擦り付ける。自分の身体で、魅恵の身体を洗うかの様に。
 魅恵は、背中に擦り付けられる晶の胸の感触と、濡れた股間が太股に擦り付けられる感触に、背筋を震わせる。
(そろそろ……始めようかな)
 晶は、ベッドの脇に置いておいたベルトを手に取り、さり気なく魅恵の両手を後ろ手に回す。そして、身体を擦り付けるのを中断して上半身を起こし、あっという間に魅恵の両手を、ベルトで後ろ手に縛った。
 突然、両手の自由を奪われた魅恵は、驚きの声を上げた。
「晶姉? 何を……」
 魅恵は振り返って、不安半分、期待半分といった感じの目で、晶を見る。晶は答えず、魅恵の股間に右手を伸ばす。
 頭を出しているクリトリスに、中指で振動を加えつつ、口を開き始めた陰唇の中に、人差し指をゆっくりと沈めて行く。弛んでいるとはいえ、完全な処女である魅恵の中は、かなりの抵抗感がある。
「あ、あ……あきら……ん……」
 すでに、十分に昂っている上に、クリトリスを刺激されたまま、膣の中に指を沈められた魅恵の息が、急激に荒くなる。
「ふぁ……あああ!」
 声を上げ、背筋を反らせて痙攣する魅恵を見て、晶は魅恵が絶頂を迎えた事を知る。晶は人差し指を抜き、中指と薬指と揃えて三本指にし、魅恵の膣口に当てた。
「ミケちゃんの処女っていうか……処女膜、貰うよ」
「ふぇ?」
 快感の絶頂の中にいる魅恵には、晶の言葉を聴き取るだけの余裕が無かった。魅恵は意味不明な言葉で、問いかけるかの様な反応をするだけである。
 処女を貰うという宣言を、魅恵が理解していない事を察しながら、晶は構わず行為を続ける。力を込めて硬直させた三本の指を、晶は魅恵の膣口の中に、ゆっくりと沈め始める。
 粘液で通りが良くなっているとはいえ、処女の魅恵の中は、かなり抵抗感があり、処女膜と思われる堰に、指が押しとどめられる。その抵抗が、晶には嬉しい。
 自分の彼女が、他の人に抱かれているのを見るのが好きな、かなり変わった性癖の持ち主の晶であっても、彼女の初めての相手だけは、誰にも譲る気はしない。今まで付き合った相手で、晶が処女を貰っていないのは、一人だけである。
 もっとも、男との経験が無い限り、処女として扱うのが一般的なので、晶の場合、あくまで初めてのセックスの相手になり、破瓜させる事を、処女を貰うと認識し、表現しているのだが。
 魅恵の場合も、晶は破瓜させる事が出来るだけで、本当の意味での処女を、貰う事は出来ない。本当の意味で、魅恵が処女で無くなったら、両性具有者になってしまうらしいと言った、魅恵の話を、晶は思い出す。
(一度、そんな身体になったミケちゃんを、見てみたいな……)
 そんな願望を心の中で呟きながら、晶は魅恵の横顔を見る。肌を紅潮させて、荒く息を刻んでいる、絶頂の入り口に入ったばかりであろう、魅恵の横顔を。
 快感で相殺されるとはいえ、破瓜の痛みは相当なものである。晶自身、絶頂を迎えている時に、昔の彼女の指によって破瓜させられたのだが、相当な痛みを感じた事を、覚えている。
 膣の中の堰の感触を、十分に楽しんだ晶は、意を決して、束ねた指を、更に奥に押し込んだ。硬い粘土を指先で貫くような感触が、脳に伝わって来る。今、魅恵を破瓜させているのだという喜びに、心が満たされ、晶は性的にも昂っていく。
 逆に、快感に満たされていた魅恵は、破瓜の激痛に混乱し、身体を揺さぶって、晶から逃れようとする。無論、魅恵の両手は縛られている上、魅恵より大きくて、力が強い晶に、身体を抑えられているのだ。逃げられる筈が無い。
「あ……あきらねえ……い、痛い! 痛いよ!」
 魅恵は堪らず、悲痛な声を上げるが、晶は構わず指を押し込み、長い指を根元まで完全に、魅恵の中に埋める。粘液よりも暖かい液体が、膣の中から染み出て来る感触を感じ、晶は魅恵の股間に、目を移す。
 股間からは、破瓜の証が流れ出していた。ベッドのシーツの染みにするのは勿体無いなと思い、晶は少し体勢を変えて、魅恵の股間に口を持って行き、粘液の混ざった血を、美味しそうに舐め始めた。
 舐めながら、晶は空いた方の手で、自分のクリトリスを弄り始めた。精神的な昂りで、すでに十分に性感が高まっていた晶は、簡単に絶頂を迎えてしまう。
 晶は魅恵の中の指を、激しく動かし始めた。魅恵は、快感と痛みという、異なる感覚に翻弄され、暫くの間、激しく身体を震わせ、痙攣させていたが、数分後……意識を失った。魅恵はうつ伏せのまま、何の反応も示さなくなる。
 魅恵が気を失った事に気付いた晶は、少しやりすぎたかなと思いながら、自分への愛撫を止め、魅恵の膣から指を抜いた。魅恵の手を縛るベルトを解き、うつ伏せのまま、気を失っている魅恵をひっくり返して、仰向けにする。
 血の付いた指をしゃぶりながら、魅恵の全身を眺めた後、晶は魅恵の上に覆い被さった。そのまま、気を失ったままの魅恵の唇を、破瓜の血で濡れた唇で存分に味わった後、晶は魅恵の隣で横になる。
 魅恵の横顔を眺めながら、晶は満足そうに、眠りの世界に落ちて行った。

          ☆          ☆

追記 「少年少女ミケ」本日発売です!

 DLsiteは登録まで一週間くらいかかるという話だったので、土日くらいに発売かなと予想してたら、本日いきなり発売になりました。ちなみに、このDLsiteの「少年少女ミケ」販売ページ(同人ダウンロードショップ)で販売中です。
 驚いた事に、もう買ってくれた人がいたようで。お買い上げ有難うございました。

《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)4

 自宅の最寄り駅である破魔崎駅から、坂崎線(さかざきせん)で二十分程の坂崎市(さかざきし)に、魅恵は来た。この辺りでは一番大きい都市で、晶の通う大学も、坂崎市にある。もっとも、晶は高校の頃からバイク通学してたので、電車とは無縁らしい。
 晶に紹介された店……ハーベストは、駅前の繁華街にあった。古い洋館の様な、レトロなデザインは、かなり目立っている。
 ドアに掲げられた、「準備中」と書かれたプレートのかかったドアを開けて、魅恵が店内に入ると、明るい女の子の声が、出迎えた。
「あの……今、休憩中なんですけど……」
 メイド服に身を包んだ、女の子のウェイトレスが、魅恵に声をかけた。栗毛のポニーテールの、魅恵と同じ位の年の娘である。
 リスっぽいイメージの顔だが、背は魅恵と同じ位あるので、女の子にしては、高い方だろう。テーブルで読書中のようで、分厚い本を手にしていた。
(俺も、あのメイド服みたいなの、着るのか……)
 この店で、ウェイトレスのバイトをする為には、栗毛のウェイトレスが着ているのと同じ、メイド服を着なければいけない事に気付いて、魅恵は少し、恥ずかしくなる。スカート系の服には、やはり多少の抵抗を、魅恵は感じてしまうのだ。
「バイトの面接に来たんですが……」
「あ、カンナさんの友達の紹介の?」
 魅恵の事を知らされていたらしい、栗毛のウェイトレスは、魅恵を店の奥に誘う。

 栗毛のウェイトレスに案内された、事務室と応接室が混ざったような部屋で、魅恵がソファーに座って待っていると、二人の女性が現われ、魅恵の向い側の席に腰掛けた。一人は、四十前後の、少し肉付きが良く、驚く程に、胸のボリュームのある中年女性。もう一人は、二十歳前後の女性。どちらも、魅恵より少しだけ、背が高い。
 若い方の顔と名前は、晶に写真を見せて貰っていたので、魅恵は知っていた。晶の友人の、南方(みなかた)カンナである。
 カンナは涼しい目をした、落ち着いた感じの女で、中年女と、顔が良く似ている。晶には、カンナの母親の経営するレストランだと聞いていたので、中年女の方は、店主である母親の方だろうと、魅恵は推測する。
 三人は、型通りの挨拶と自己紹介をした。案の定、中年女はカンナの母親の南方スミレで、この店のオーナー店主兼料理人だった。
 魅恵はスミレに、履歴書を手渡す。無論、履歴書の性別は女性に変えてある。名前は、女でもおかしく無いので、そのままだ。
 スミレは履歴書に目を通しながら、時給や勤務時間などを、魅恵に簡単に説明した。時給は九百円と、高校生にしては十分な額で、勤務時間は午前十時から午後六時までの八時間。
 休憩時間は、午後二時から三時までの一時間。しかも、交通費と昼食が支給されるそうなので、魅恵にはかなり、条件が良いバイトだった。
「高校一年生ね……。出来れば、明日からでも入って貰って、四月五日までフルで働いて欲しいんだけど、大丈夫?」
「はい」
「良かった」
 スミレは、嬉しそうに微笑んだ。
「今年の春で、大学生だったウェイトレスの娘が、三人一度に卒業して、バイト辞めちゃったのよね……。新学期からのバイトは決まってるんだけど、春休みの間、ウェイトレスが足りなくて、困ってたのよ」
「お陰で、私が春休み返上で、家業の手伝いさせられる羽目になってるんだ。君がバイトに来てくれると、多少は休める様になるから、有り難いな」
 苦笑しながら、カンナは続ける。
「手伝うのは構わないんだけど、春休み全部、フルタイムで働かされるのは、流石に辛いんでね、晶に頼んでたのよ……誰か可愛い子、紹介してって。晶は可愛い子の知り合いが、多いから」
「可愛いくないと、駄目なんですか?」
「いや、そんな事無いんだけど……うちのウェイトレスのコスチュームって、着るのに度胸が要るのよ。ある程度、ビジュアルに自信無いと、着れないでしょ?」
 カンナは、着ているメイド服のスカートの裾を持ち、広げた。
「確かに……」
(――似合う似合わないという意味では、ハードルの高いコスチュームだな)
 魅恵はカンナを見て、そう思う。カンナも、本を読んでいた栗毛のウェイトレスも、このコスチュームを自然に着こなせるのは、ビジュアル的には、それなりのレベルに達しているからだと言える。
 特に母譲りのカンナの胸は、かなりのものだ。雑誌で見かけるグラビアアイドル並に、カンナの胸は大きい。
 魅恵は頭の中で、晶の胸と比べてしまう。
「こんなコスチュームだから、面接受けに来た子でも、制服が恥ずかしいって、バイト断って帰っちゃうんだよね。全く、普通の制服にすれば良かったのに……」
「だって~可愛いじゃない、メイド服って!」
「いい年して、可愛いモノ好きなんだから……。メイド服が普通な秋葉原のメイド喫茶ならともかく、普通の店のウェイトレスで、メイド服着てウェイトレスするの、結構恥ずかしいんだよ」
 カンナは、呆れたように言った。メイド服を制服にしたのは、スミレなのだ。
「ま、君は問題無いよね、似合いそうだし。えーっと、ミケちゃんて呼んででいい?」
「あ、はい」
 晶からカンナは、魅恵のあだ名を聞いているようだった。
「バイト、決定でいいね?」
「はい、喜んで」
「じゃあ、これから仕事内容教えて、制服も合わせるから……ついて来て」
 立ち上がって歩き出したカンナの後に続き、魅恵も歩き始める。店の奥に向かって。

 三十分程の時間で、魅恵はウェイトレスのバイトの業務を、カンナと未来に教えられた。未来は、本を手にしていた、栗毛でポニーテールのウェイトレス……榊未来(さかきみく)である。
 注文は、PDA風のデバイスに入力するだけで、覚える事は、特に無い。配膳も、運動神経抜群で器用な魅恵にとっては、簡単な事だった。魅恵はすぐに、ウェイトレスの業務を覚えた。
 三十の座席を、二人のウェイトレスで担当する事になっている上、流行ってる店なので、食事時は忙しいのだと、魅恵はカンナに告げられる。
「じゃ、次は制服合わせだね」
 カンナは、魅恵を更衣室に連れて行った。

「これ、着てみて。未来と同じサイズだから、大丈夫だと思うよ。ミケちゃん、未来と背もスタイルも似てるから」
 カンナに手渡されたメイド服を受け取る。
(これを……着るのか)
 メイド服を眺めていると、どんどん着る気分が、殺がれてしまう気がしたので、魅恵は深く考えず、さっさとメイド服に着替える事にして、服を脱ぎ始める。
(ちょっと恥ずかしいけど……)
 カンナが見ている前では、少し恥ずかしいのだが、女が女の前で着替えるのを躊躇うのは、変に思われると思い、魅恵は恥ずかしさを堪えて、下着姿になった。
 まず、ブラウスを着て、紺色のワンピースを、履く様に着る。前が開いているタイプなので、ボタンを留めるのは楽だった。思った以上に、膝丈が短かい。
 膝上二十センチ程なので、スカートで言えば、立派なミニである。紺のオーバーニーのソックスがセットになっているので、足の露出は殆ど無いのだが、やはり魅恵には、かなり恥ずかしい格好だった。
 ブラウスとワンピースは地味なのだが、メイド服だけあって、その上の装飾は派手である。エプロンは胸当てのあるタイプで、肩も裾も、見事にフリルで飾られている。おまけに、カチューシャまでもが、フリルで可愛らしく装飾されているのだ。
「これ、何ですか?」
 良く分からない布を手に取り、魅恵はカンナに尋ねる。
「サッシュよ。腰に巻く奴なんだけど、普通は使わないから、知らないよね」
 感じの良い笑顔で、カンナは答えを返す。新人に教える事には、慣れているらしいカンナは、サッシュのついでに、クロス・タイやカフスなどの付け方を、魅恵に教える。
「エプロンとワンピースは、店がまとめてクリーニングに出すけど、ブラウスとソックスは、三セット支給するから、毎日洗濯してね。あと、靴は暗色系。メイド服とコーディネートしないと、変になるから」
「分かりました」
 メイド服を着終わった魅恵は、ロッカーの内側に設置してある鏡に、自分の姿を映してみた。
(げ! 似合ってやんの)
 自分でも驚く程、メイド服は魅恵に似合っていた。
「似合うよ、凄く可愛い」
 カンナは、素直な感想を述べた。
「ミケちゃん……晶の彼女なんだよね?」
 突然、晶との関係に話が移ったので、魅恵は少し驚いた。
「そうですけど……」
「――珍しいな、晶がボーイッシュな感じの娘と、付き合うのって」
 魅恵の顔を見詰めながら、カンナは話を続ける。
「今まで、晶が付き合ってた娘って、どっちかっていうと、いかにも女の子って感じの娘ばっかりだったんだ。ミケちゃんも可愛いんだけど、晶と同じで、男の子っぽい感じなんだよね……」
(そりゃ、そうだよな。本当は男なんだから……)
 心の中で、魅恵は苦笑する。
「あ、ご免。晶の昔の彼女の事なんか、聞きたく無いよね」
 昔の彼氏とかなら、嫉妬するかもしれないが、彼女というのは、どう反応して良いものか分からない。特に聞きたい話でも無いので、魅恵は一応、頷いておく。
「その年だと……晶が初めての相手だったりするの?」
 どう答えるべきか分からず、魅恵は黙ったまま、答えなかった。
「そうなんだ」
 魅恵の反応から、既に晶と身体の関係がある事を察したカンナは、悪戯っぽく笑った。
「高校一年でしょ? 早いな……」
「カンナさんは、恋人……彼氏とかいるんですか?」
「それが、恥ずかしい話になるんだけど、今までいた事が無いのよね、彼氏とか」
 女性的な魅力に溢れるカンナに、彼氏がいた事が無いという話を聞いて、魅恵は意外そうな顔をする。
「お陰で二十歳過ぎだっていうのに、まだ経験が無いのよね、男とは……」
 カンナは、恥ずかしそうに言った。
「中高と女子高で、男と縁が無かったから、大学ではって思ってたんだけど、大学通って、店の手伝いやってたら、彼氏作る暇も無くてね……未だに処女よ、処女!」
「カンナさん美人なのに、勿体無いですね」
「有難う」
「胸だって、凄く大きいのに」
 魅恵は、カンナの胸に目を遣る。
「でしょ? 宝の持ち腐れって奴よね。しばらく使い道無いから、良かったらミケちゃん、使う?」
 魅恵の左手の手首を掴み、カンナは自分の右胸にあてがう。
(うわ……たぷたぷして、指が埋まっちゃう)
 柔らかな感触に魅了され、揉みたいという誘惑に負けそうになったが、魅恵は右手を引っ込めた。
「――晶姉に怒られるから、止めときます」
「晶は、そんなに嫉妬深く無いから、大丈夫だと思うけどな……」
 カンナは、少し残念そうに言った。
「だって、自分の彼女を、他の人に……あ」
「彼女を、他の人に……何なんですか?」
 話の途中で口ごもった、カンナの様子が気になったので、魅恵は問いかける。
「――ミケちゃんが他の女の子とエッチしたら、晶が怒るって、ミケちゃんが思ってるって事は、ミケちゃんは晶に、あの趣味の事は聞いて無いんだよね?」
「あの趣味?」
「晶には、ちょっと変わった趣味があるのよ。晶が自分でミケちゃんに言ってない事、私が言ったら駄目だから、教えないけど。ま、大した事じゃ無いし、その内分かるだろうから、気にしないで」
(そういう言い方されると、余計に気になるんだけど……)
 魅恵は思ったが、カンナはとぼけて、それ以上、魅恵の問いには、答えなかった。

《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)3

(考えてみれば、あたしにとってミケちゃんって、ベストなパートナーよね)
 胸を魅恵に与えながら、晶は思う。最初は、女になった魅恵が、余りにも可愛いかったので、つい勢いで手を出してしまったのだが、今の晶は本気で魅恵の事を、自分にとって最適なパートナーだと、思い始めていたのだ。
 実は、前の彼女と別れてからの数ヶ月間、セックスをしていなかった晶は、かなりの欲求不満状態だったのである。だからといって、レズ用の出会い系サイトなどで、遊びだけの相手を探す程、晶は軽くは無い。
 身体の関係を持つ相手は、晶の場合、恋人である場合が殆どである。恋人がいない場合に欲望を満たす為、身体を重ねる相手であっても、ある程度以上は親しい相手……ちゃんとした人間関係を持っている相手の方が望ましいと、晶は思っている。
 家族や彼女だった女性達以外で、魅恵は晶にとって、最も親しい相手だったので、ある程度以上は親しい相手という意味合いでは、何の問題も無い、しかも、魅恵が自分に対して、恋愛感情を抱いている事も、晶は気付いていた。
 晶は、男性からも言い寄られる事が多かったのだが、男から寄せられる好意は、はっきり言って、不快以外の何物でも無かった。しかし、魅恵からの好意は、晶には気分が良かったし、自分の特殊な性的趣向のせいで、応えてあげられない事に、罪悪感すら覚える程だったのだ。
 そんな時、魅恵自身が女の子の身体になって、目の前に現われたのである。気心の知れた親しい相手の上、自分に好意を寄せてくれている魅恵が女の子になったのを見て、つい、欲求不満解消の相手にしてしまおうと、晶は思ってしまったのだ。自分に恋愛感情を抱いてるだろう魅恵にとっても、自分が相手なら、嫌がりはしないだろうと思って。
 しかし、性欲を満たす為だけに関係を結ぶ事を、晶は魅恵に拒まれてしまった。そこで短い時間の間に、魅恵と自分の事を、良く考えてみたところ、魅恵は自分にとって、かなり魅力的な存在である事に、晶は気付いたのだ。
 同性愛者としての性的趣向のせいで、一般的な意味合いでの結婚や子作りを、晶は諦めていた。ところが、女性の身体に変われるようになった魅恵は、晶にとって性的な対象になる上、結婚も出来るし子供も作れる相手なのだ。
 しかも、晶にとって魅恵の外見や性格は、昔から好ましかったりもするのである。今現在も親しい相手で、結婚や子作りが可能な上、性欲を満たす相手にもなり、外見や性格までも好みである魅恵は、人生のパートナーとしてベストの相手である気が、晶にはしてきたのだった。
 無論、晶にとって男の魅恵に抱かれるのは、多少どころか相当な抵抗がある。しかし、元から見た目は女の子に見える魅恵なら、何とか堪えられそうに、今の晶には思えた。
(まぁ、とにかく今は、女の子になったミケちゃんを、楽しませて貰おうっと)
「ベッドに行こうよ……」
 晶は魅恵を、ベッドに誘う。胸から顔を離して頷く魅恵を、軽々と抱き抱えると、晶はベッドの上まで魅恵を運び、仰向けに寝かせる。
 ベッドの脇に立った晶は、ベルトを外してジーンズとショーツと靴下を脱ぎ捨て、全裸になる。そして、仰向けのまま見上げている魅恵の上に、舌で唇を舐めながら伸し掛かる。
 二人分の体重に、スプリングが軋む。反動で弾むベッドが、晶と魅恵の身体を揺らす。
 身体を重ねた晶は、魅恵の唇に、自分の唇を重ねる。そのまま、魅恵のブラを上にめくり上げ、露になった胸を、両手で揉み始めた。
(ちょっと、硬めだな)
 丁度、手に収まるサイズの、魅恵の乳房の感触を、晶は楽しみながら、揉み続ける。
「ん……ん」
(結構、感度は良いみたい)
 感じている事を示す、魅恵の呻き声を聞いた晶は、唇を外して、魅恵に問いかける。
「乳首……吸われた事、ある?」
「――ある訳、無いだろ」
「嬉しいな、初めてなんだ」
 晶は嬉しそうに、魅恵の右の乳首に口を付け、強く吸った。左の胸は、右手でソフトに揉み続け、左手は魅恵のショーツに伸び、下に下げる。
 手が届かない所まで下げたショーツを、晶は足を使って、器用に脱がした。ショーツは、魅恵の左足の先に、引っ掛かっているだけになっている。
 むき出しになった魅恵の股間の、薄い毛を指に絡め、軽く弄んだ後、晶は割れ目に指を這わせ始める。既に粘液で滑り始めているので、下の唇は開いているが、腟口の感触は硬い。
 陰唇の上の、まだ皮を被っているクリトリスの皮を左手で剥き、中指と人さし指で摘み、晶は適度な強さで刺激する。
「ふぁ……ん……あぅ」
 両胸と同時に、最も敏感な場所を愛撫された魅恵は、快感に息を荒げ始める。粘液の分泌量が十分に増え、堅く閉じていた膣口も、弛み始める。
 晶は人さし指での刺激を続けながらも、中指をゆっくりと、膣の中に沈め始めた。すでに十分に濡れている魅恵の膣は。多少の抵抗をしながらも、晶の指を飲み込んでいく。
「う……ん……」
 晶が指先に、強い抵抗感を感じた直後、魅恵が軽く呻き、身体を捩る。
(――処女膜かな?)
 指先の感触から、晶は推測する。膜といっても、言葉のイメージとは違って膜状の物では無く、膣内が狭まっている堰の様なものなので、貫く様に抉じ開ける時には、それなりの痛みを伴う場合が多い。
(痛くしたら……ミケちゃんが抵抗し始めるかもしれないな)
 まだ女になったばかりの魅恵に、痛みが伴う程の行為を行えば、女の身体での性行為に対する、魅恵の抵抗感を高めるだけだと思い、それ以上の侵入を、晶は諦める。無論、魅恵の処女膜は、自分の指かレズ用の疑似ペニスを使い、自分で貫くつもりなのだが、焦るのは禁物だと、晶は思ったのだ。
(いかせるだけなら、そこまでする必要も無いしね)
 晶は指を抜いて、股間から左手を離した。そのまま、左手で魅恵の右胸を愛撫し始め、身体を下にずらす。
 ずらしながら、おなかやへそなどを軽く舐め、晶の顔が、魅恵の股間の正面に移動する。
(綺麗……。やっぱり、初物はいいな)
 完全に未使用品である魅恵のモノは、色素の沈着も無く、見事な薄目の桜色をしていた。初物好きの晶は、嬉しそうに魅恵の股間に、舌を這わせ始める。
 股間を舐められて驚いたのだろう、魅恵が脚を閉じたせいで、頭を太股で挟まれてしまうが、晶は構わずに舌と唇を使って、魅恵の股間を責め続ける。女の身体を知り尽くしている晶の手にかかれば、少女の身体となった魅恵を、口と手だけで翻弄する事など、訳も無い。
 次第に、魅恵の呼吸が荒くなり始める。
「ふぁ……あ、ん……ん……ぁ……」
 魅恵が感じているだけでも、いわゆるタチ……男役である晶は、気分が良いし、昂っても来るのだが、やはり愛撫も欲しくなる。晶は一度、魅恵から身体を離して、自分の股間が魅恵の顔の真上に来る様に、身体の向きを変えた。
 魅恵は初めて、真近に女性器を見た。しかも、それが憧れ続けて来た晶のモノだったので、魅恵は喜びに満たされてしまう。
「ミケちゃん、アタシにも……お願い」
 晶はゆっくりと股間を下ろし、魅恵の顔の上に跨る。
「手は、こっち」
 魅恵は晶の手と声に誘われ、両手を晶の胸に伸ばす。晶の行為を真似して、魅恵は晶の股間を舐めつつ、胸への愛撫を始める。
 既に十分に濡れていた、晶のクリトリスや膣口付近を、魅恵は舌で舐め回す。張りの有る乳房を、優しく揉みしだく。
「そう……そんな感じ。続けて」
 晶も、魅恵への愛撫を再開する。顔を股間に埋め、手は胸に伸びる。そのまま五分程、二人はシックスナインの体位で、互いに奉仕し合い続けた。
(もうそろそろ……かな?)
 声と息遣いから、魅恵が絶頂を迎えそうだなと、晶は察する。
(――あたしも……なんだけどね)
 魅恵は晶のやり方を真似ている分、意外にも手や口での行為が上手く、晶も絶頂を迎える手前まで、上り詰めようとしていた。
(そう言えば、何をやっても器用な子だったもんね、ミケちゃん。この手の事を覚えるのも、早いって訳か……)
 すでに十分に昂ぶっている二人に、強い刺激は必要無い。晶は体勢を変え、自分の陰唇で、魅恵の陰唇を塞ぐ様に、身体を重ねた。男と女なら、側位と言う体位になる。
 側位なら顔を見れるし、キスも出来る。おまけに胸を愛撫する事も出来るので、晶は側位が好きなのである。
 無論、実際に繋がっている訳では無いし、ディルドなどの疑似ペニスを介して、繋がっている訳でも無い。一見、女同士のセックスでは、無意味な体位に思われがちだが、十分に昂り、後は絶頂を迎えるだけという段階なら、程良い刺激が、寧ろ丁度良い位なのだ。
 晶は、魅恵と唇を重ねる。上と下の唇を、重ね合う形になっている。そのまま、舌を絡ませ合い、手は、お互いの胸や脇腹を這い回っている。
 股間への微妙な刺激は、二人を次第に、頂点に上らせて行く。
「ふぁぁあ……う……ああ……」
 声にならない声を上げながら、魅恵は全身を、激しく震わせる。先に達したのは、魅恵だったのだ。男の身体の時の、自慰で感じる際の快感と、快感の度合いでは同等ではあっても、比べ物にならないだろう長さで続く、快感の波に流された魅恵は、晶の身体に縋り付く。
「あたしも……ん……」
 魅恵が達したのを確認してから、晶は腰の動きを激しくして、自分への刺激を強める。程なく、晶も魅恵を追い掛けるように、達する。
「くぁ……ぅ…あ……ん……」
 晶も、声を上げ始める。頭から腰までの身体の軸といえる部分に、凄い熱を感じ、頭の中が熱と光で、白くなって行くような気分に、晶は満たされる。
(気持ち……イイ……)
 光と熱が、自分の全身に満ちて行くように、晶は感じる。そのまま、絶頂と、その手前とを行き来出来るような、程良い刺激を、お互いの身体が感じるように、晶は腰を揺さぶり続けた。
 その後、絶頂付近を彷徨い続けた二人の性感が、十回近く達した後、晶は満足したように、股間を合わせるのを止めた。そして、普通に魅恵を抱き締めたまま、後戯に入る。
 仰向けになって、魅恵はぐったりと、魅恵を投げ出す。荒れている呼吸で上下する胸の上では、汗と唾液の混ざり合った体液で滑る乳房が、震える様に揺れている。
 晶は、そんな魅恵の身体を、愛おしそうに撫で回し続けた。

「男よりも女の方が、性的な快感は凄いっていうけど、どうだった?」
「――似たようなもんだよ」
(本当は、女の身体の方が凄い……っていうか、気持ちいい時間が、長いけど)
 女の身体の方が、快感の続く時間が長い事を、魅恵は身を持って知った。当然、女の身体の方が総合的には、性的な快感は凄いと言っても良いのだが、その事を認めてはいけないような気が、魅恵にはしたのだ。
「そうなんだ……。実際に比べられるの、ミケちゃんだけだもんね」
 晶は服を着ながら、残念そうに感想を口にする。
「ミケちゃんが、そう言うなら、そうなのかな……」
 恥ずかしかったので、晶より先に着替え始め、すでに着替え終えた魅恵は、ベッドに腰掛けている。ちなみに、身に着けている下着は、女物である。
「それにしても、初めてにしては、凄かったね」
「――晶姉が、上手いからだよ」
「まぁ、女の子相手にするの慣れてるから、あたしは」
 微笑みながら、晶は続ける。
「それに、女だから……どうすれば女の子が気持ち良くなるかも分かるしね。だけど、ミケちゃんも初めてにしては、上手かったよ」
「ありがと……。今日は晶姉に合わせて、女の身体でしたけど、今度は俺に合わせてよね」
「分かってるよ」
 そう言いながら、晶は魅恵と、軽く唇を合わせる。
「そうだ、ウェイトレスのバイト、本当にやるの?」
 魅恵は頷いた。
「免許欲しいから……晶姉とツーリング行きたいし」
 既に恋人関係になったので、晶との距離を近付けるという、当初の免許取得目的は、無意味なものとなったのだが、バイクで行動する事が多い晶と付き合うなら、やはりバイクの免許は、必要なのだ。やはり、春休みはバイトに費やさなければならないと、魅恵は思う。
「だったら、すぐに申し込んだ方がいいよ。先に誰かが、決まっちゃうかもしれないから。ちょっと待ってて」
 携帯電話をジーンズのポケットから取り出して、晶は電話をかけ始める。
「あ、カンナ? カンナが働いてるレストランのバイト、もう決まっちゃった? まだ? 良かった、一人、紹介したい娘がいるんだけど……うん、高校生。可愛い事は、あたしが保証するよ。だって、あたしの彼女だから」
 彼女だと紹介したという事は、晶がレズだと知っている友人なのだろうと、魅恵は推測する。出来れば彼女では無く、彼氏だと言って欲しいんだけどなと、魅恵は思う。
「――分かった。有難う、バイバイ」
 晶は電話を切った。
「これから面接だって、いいよね?」
 魅恵は、頷いた。

《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)2

「すいません、誰かいませんか? すいません!」
 翌朝、妖シ屋の前には、戸を叩き、叫び続ける魅恵がいた。しかし、返事が返ってくる事は無く、店の中からは、人の気配も感じられなかった。
(参ったなぁ……)
 本日休業の札を、忌々しそうに睨みつけた後、魅恵は溜息をつく。溜息とはいえ、大きく呼吸すると、少し胸がきつく、魅恵は軽い苦痛を感じる。
 身体の大きさは、それ程変わっていないのだが、胸だけが一晩で大きくなったので、魅恵はTシャツの胸の辺りが、きつくて仕方が無いのだ。
(まさか本当に、女になるなんて……)
 胸が大きくなったのは、魅恵の身体が女性化してしまい、胸が膨らんでしまったせいなのだ。女主人の言う通り、本当に、身体が女になってしまったのである。
 困り果てたように、魅恵はTシャツの胸元をめくって、自分の胸を見る。雑誌で目にするグラビアアイドル程に大きくは無いが、膨らみは小さくは無い。Cカップ位だろうなと、魅恵は根拠無く思う。
(どうしよう……これ?)
 朝の八時に目覚め、自分の身体が女になっている事に驚愕した魅恵は、妖シ屋の女主人に、元に戻る方法を聞こうと思って家を飛び出し、妖シ屋に辿り着いたのだ。しかし、妖シ屋は再び、休業になってしまっている。
 仕方が無いので、魅恵は家に戻る事にした。
(まあ、女になるって事が本当だったんだから、他の話も本当なんだろうな)
 女主人の話を思い出しながら、魅恵は心の中で呟き続ける。
(つまり、今日一日は女のまま、午前霊時前に指輪を外せば、次の日は元に戻る訳だから、それまでの間、警察沙汰とセックスを避ければ、いいわけか……)
 見慣れない膨らみ方をしている、自分の胸を見ながら、魅恵は思った。
(つーか、セックスなんかする訳ないじゃん……男相手に)
 考えるだけで気持ちが悪くなり、魅恵は足を早めて、家路を急いだ。
「おい、今の娘、ノーブラだぜ」
「乳首透けてたな」
 すれ違った、大学生風の二人組の男の会話が、後ろから聞こえて来た為、魅恵は自分が、かなり大胆な格好をしている事に気付いた。ブラジャーなど持っていないので、ノーブラなのは当然なのだが、急いで出てきたので、長そでの白のTシャツを着てきてしまったのだ。
 薄手の白いシャツなので、胸が透けて見えるのは、当たり前である。魅恵は急に、恥ずかしくなってきてしまう。
(女は服とか、面倒臭いんだな)
 さっさと家に帰ろうと、魅恵は走り出した。走ると、反動で胸が揺れるので、魅恵は少し、走り難さを感じる。
(成る程、だからブラジャーが必要になる訳か……)
 魅恵は、ブラジャーの存在意義が、胸を隠すためだけでは無い事を、初めて知った。

「あれ? ミケちゃん……だよね?」
 家の門の前で、突然、晶に後ろから声をかけられ、魅恵は心臓が止まりそうになった。
(あ、晶姉! よりによって、こんな時に!)
 女になった姿を、晶に見せる訳にはいかないと、魅恵は思う。それ故、聞こえなかった振りをして、魅恵は家のドアに手をかけ、中に入ろうとする。
 だが、晶は素早く魅恵の手を掴み、引き止めた。
「――こんな近くで、聞こえない訳が無いじゃない!」
 ジャージ姿の晶は、魅恵を自分の手許に引き寄せて、睨み付けながら、晶は強い口調で続ける。
「ミケちゃん、あたしを無視する気?」
 汗の匂いがする。晶が朝のジョギングを欠かさない事を、魅恵は思い出した。魅恵は丁度、ジョギング帰りの晶に出会ってしまったのである。
「違うって! 今、ちょっと都合が悪い……」
「――ん?」
 膨らんだ魅恵の胸を、晶は不思議そうな目で見る。魅恵の身体が、いつもと違う事に、晶は気付いたのだ。
「何、それ? 女装の練習?」
「あ、そうそう! ちょっとシャレで女装してみたんだ!」
「ふーん。良く出来てるなぁ……」
 そう言うと、晶は魅恵の胸を触り始めた。
「ちょっと、晶姉!」
 胸から脳に、妙な感覚が伝わるのが気持ち悪くて、魅恵は身をよじった。
「――ちょっと見せて」
 魅恵の胸がどうなっているのかが、気になったのだろう。晶は、魅恵のTシャツを捲り上げて、魅恵の胸の膨らみを、直に目にしようとする。
 晶の目論見を阻止しようと抵抗するものの、身体が大きい分、晶の方が力が強く、魅恵は晶にされるがままとなる。魅恵は打撃技なら、かなり強い部類に入るのだが、非力な為、身体を掴まれて組まれると、弱いのだ。
「特殊メイク?」
「そう、特種メイクなんだ! 良く出来てるだろ?」
 そう言って、誤魔化そうとした魅恵の両胸を、晶は両手で揉み始めた。今度は、気持ち悪いというより、微妙に気持ち良いという感じがして、魅恵は声を漏らしてしまう。
「あ……ちょっと、晶姉っ!」
(やばい! 何か、微妙に気持ちイイ……)
「――乳首、硬くなってる。体温もあるし、肌触り本物……。特種メイクじゃないよ、これ!」
「違う、本当に特種メイク……痛っ!」
 突如、晶に乳首を強く抓られ、魅恵は痛さの余り、悲鳴の様な声を上げてしまう。痛さで声を上げた後、魅恵は晶の策にはまってしまったのに、気付いた。
「痛い訳無いよね、特種メイクだったら。どうしたの、これ? 言わないと……」
 晶は再び、乳首を強く指で挟んで、軽く抓る。
「痛っ! 言うよ、言うから止めてって!」
「そうそう。人間、素直が一番」
 魅恵の胸から、晶は手を放す。魅恵は慌てて、シャツを下ろした。
「で、どういう事なの?」
「後で……慎吾の部屋で話すよ」
「絶対だよ」
 魅恵は頷いた。色々な意味で、魅恵は晶に頭が上がらないのだ。

 朝食の後、魅恵は慎吾の部屋に向かった。胸が透けて見えない様に、Tシャツの上に、厚手のフリースを着て。
 部屋に着いた時、既に晶は慎吾と共に、魅恵を待っていた。ジョギングの際の服装ではなく、晶はTシャツとジーンズ姿に、着替えている。
 魅恵は結局、妖シ屋に行ってからの経緯を、晶と慎吾に話した。包み隠さず、全てを順序立てて。
 晶と慎吾は、信じられないという面持ちで、魅恵の話を聞いた。無論、魅恵の胸の膨らみを、初めて目にした慎吾は、話よりも現実の魅恵の身体の方に、遥かに驚かされたのだが。
「――ミケちゃんが、本当に女の子になってなかったら、信じられないような話だけど、現物が目の前にあるからね……」
「俺だって、未だに信じられないし、信じたく無いよ」
「だけど、妖シ屋の人が言う通りになったのなら、指輪外せば、元に戻れるっていうのも、本当なんだろ?」
 慎吾は冗談半分といった感じの口調で、問いかけ続ける。
「だったら、別にいいじゃん。それに女の方が、バイト探しやすいんだから、バイト探す間だけ女になってれば?」
「そうだね。本当に女になれるようになったんだから、女装しないでも、バイト出来るって事じゃない! ウェイトレスのバイト、紹介してあげるよ!」
「それは……」
 口ごもる魅恵に、女性化した上でのバイトを、晶は熱心に勧める。
「せっかく、女になれるようになったんだから、その能力を利用しないの、勿体無いよ。今のミケちゃん、誰が見ても、ボーイッシュな可愛い女の子だし」
 鏡で見た自分の姿は、自分でもヤバいなと思う程、可愛かった位なので、女の子としてウェイトレスのバイトをしても、誰も変には思わないだろうと、魅恵自身も思う。晶や慎吾の言う通り、バイト探しという意味では、チャンスなのだろうと、魅恵も考えない訳では無い。
「そうだな……。だけど、胸とか痛くて動きにくくて、不便なんだよね」
「ブラすればいいじゃない……って、持って無いんだよね?」
 晶の問いに、魅恵は頷いた。
「姉貴の貸して……って、ミケには大きすぎるか……」
 慎吾は、晶と魅恵の胸を見比べながら、そう言った。晶の方が背が高いせいもあるが、乳房自体も、晶の方が少し大きい。
「スポーツタイプのだったら、大丈夫かもよ。あれは生地が伸びるんで、少し小さめの買うようにしてるんだ。ミケちゃんが欲しいなら、あげるけど……欲しい?」
 魅恵は、大きく頷いた。流石に、一人で女性下着売り場に行って、買う気はしなかったので、少しくらいサイズが違おうが、貰えるのは有り難いのだ。
「だったら、うちに来なよ。サイズ大丈夫か確認して、使えるようだったら、下とセットで、何セットかあげるから」
「マジ? ありがとう! バイト代入ったら、何かおごるから! ところで、下とセットの下って?」
「ブラだけじゃ、困るだろ? 女は下着、ブラとショーツをセットで買う場合があるから、ブラとセットになってるショーツって意味」
「し、下も……女物? 俺、下は男物のボクサータイプのとかでいいんだけど……」
「ウェイトレスのバイトするんだったら、女子更衣室とかで着替える事だってあるんだし、男物の下着なんて穿いてたら、不審に思われるよ」
 晶に言われ、魅恵は渋々、納得した。
「じゃ、行こうよ」
 魅恵は頷くと、晶と共に腰を上げる。
「姉さん、一応言っておくけど、ミケは女の身体になってるだけで、本当は男だって事、忘れるなよ!」
「分かってるよ、そんな事」
 慎吾が何故、そんな注意を晶にしたのか、魅恵は少し不思議に思い、理由を聞こうと思った。しかし、晶に背中を押されて部屋を出てしまった為、魅恵は結局、聞き損ねた。
「大丈夫かなぁ。姉さん、可愛い女の子に目が無いから……」
 慎吾は、心配そうに呟いた。

「これなんだけど……どう?」
 葛城家の晶の部屋で、魅恵は晶に下着を手渡された。魅恵は、スポーツタイプの下着の上下を手に取って、眺める。
「通信販売で買ったら、少しサイズが小さかった、スポーツインナーのセットなんだ。タンクトップやショートパンツっぽい感じだろ?」
 少し恥ずかしそうに、魅恵は頷く。
「この手の、女の子っぽく無い下着が好みなんだ。水着っぽいから、ミケちゃんも抵抗無いでしょ?」
 晶に手渡された下着は、濃紺のセパレートの水着の様な、シンプルなデザインで、生地の面積も広い。
(これなら、まぁ……許せる範囲かな)
 下着のデザインを見て、魅恵は少し、安心する。いかにも女性用といった感じのブラやショーツを着るのは、流石に気が引けるのだ。
「着てみないと、サイズが合うかどうか、分からないな……」
「だったら、着てみれば?」
「着替えるとこ……ある?」
「ここで着替えればいいじゃない」
 晶は、事も無げに言った。
「ここでって……」
「あたしの事は、気にしなくていいよ。だって、今のミケちゃん、女の子なんだから。女の子が女の前で着替えるの、当たり前じゃない?」
「だけど、俺は本当は……」
「あたしが紹介する、ウェイトレスのバイトするなら、更衣室で、他の女の子の前で着替えなきゃなんないんだよ。その程度の事を恥ずかしがってたら、女の子のふりしてバイトするのなんて、無理じゃないかな?」
「――分かったよ」
 バイクを貰う上に、バイトを紹介してもらい、おまけに下着をくれる晶に逆らって、機嫌を害する事は、魅恵は可能な限り避けたい。それに、今の身体は女の子そのものなので、晶からすれば、見なれた裸の筈だし、魅恵にとっても、見られたら恥ずかしいモノが、消えてしまっている。
(脱いだところで、問題になる事も無いか……)
 魅恵は、そう自分に言い聞かせて、服を脱ぎ始めた。フリースとジーンズを脱いだ後、少し躊躇って、裾が長いシャツで、股間を隠しながら、トランクスも脱ぎ捨てる。
 そして、ショーツの方を手に取って、一気に穿く。
「どう?」
「丁度……かな?」
 ショーツは、魅恵のサイズにぴったりだった。身体を動かしてみるが、ずれ落ちたりする様子は無い。
「次は、ブラか……」
 魅恵は晶に背中を向けて、少し恥ずかしそうに、シャツを脱ぐ。水着の様なブラを手に取り、頭から被って身に着ける。
「こっちも少し緩いけど、大丈夫だと思う」
 全身を映せる鏡の前に行き、魅恵は自分の姿を映してみる。鏡の中にいる自分の姿が、予想よりも可愛くて色っぽかったので、魅恵は少し驚いてしまう。
「水着姿の女の子って、感じだよね」
 晶の言葉に、魅恵は頷く。魅恵自身にも自分の姿が、セパレートの水着を着ている少女の様に、見えたのである。
 鏡の中に、晶の姿が映る。晶が魅恵の後ろに、移動したのだ。
「前から思ってたんだけど、ミケちゃんって本当に可愛いよね。男にしておくの、勿体無いくらいに……」
 そう言いながら、晶は魅恵を、後ろから抱き締めた。まるで、背の高い青年が、恋人の少女を後ろから抱く様に。
 魅恵は、晶の突然の抱擁に驚く。
「あ、晶姉……?」
「ミケちゃん、あたしの事……好きだろ?」
「え?」
 自分の晶への恋愛感情が、晶にばれていたと知った魅恵は、恥ずかしさで赤面し、頭の中が混乱してしまう。そして、どうリアクションしていいか分からなくなってしまい、魅恵は晶の為すがままになる。
 魅恵の反応を楽しむように、晶は魅恵の身体を撫で回す。
「あたしも、ミケちゃんの事は、男の子の中では一番、好きだったんだ。だけど……あたしって、女の子の方が好きなのよね、恋愛対象としては」
(女の子の方が好き?)
 魅恵は、自分の耳を疑った。
(それって、ひょっとして……)
 晶は魅恵の両胸に手を移動し、ブラの上から胸を触りながら言った。
「つまり、レズって訳。男の子は、恋愛とかセックスの対象にはならないの……」
 自分がレズだという晶の告白は、本来なら魅恵にとって、相当にショックな出来事である筈なのだが、今の魅恵は、その程度の事に驚いている場合では無かった。晶の告白よりも行動の方が、遥かに衝撃的だったのだ。
 晶の右手が、魅恵のブラをめくり上げ、胸に直接触れ、愛撫を始める。左手は、ショーツの上から、股間を撫で始めた。
「――あ、晶姉、どこ触って……あっ!」
 女性の身体になって、股間を触られるのが初めての魅恵は、未知の感覚に身体を硬直させ、吐息を漏らしてしまう。
「はぁ……」
 愛撫に魅恵が反応したのを確認し、晶の言動は、更に大胆になっていく。
「男相手にセックスする事なんて、一生無いと思ってたんだけど、まさかミケちゃんの身体が、女になるとなね……」
「身体が一時的に女になってるだけで、俺は男だって!」
「分かってるけど……そんな事、気にならない位に、ミケちゃんが可愛いから、こういう事、したくなっちゃうんだよね……」
 晶は、右手を胸から放し、魅恵の頬に手を当てて、後ろを向かせた。そのまま強引に、唇を重ねる。
「んっ……ん……」
 大好きな晶相手のキスなのだから、喜んでもいい筈なのだが、魅恵は複雑な気分だった。女性の身体で、レズだった憧れの女性に唇を奪われるという、倒錯的なシチュエーションのせいで、魅恵は素直に、晶とのキスを喜べないでいたのだ。
 魅恵の唇を割り、晶は舌を絡めて来る。その間も、晶の両手は、魅恵の全身を這い回っている。
 晶の愛撫によって、次第に身体が熱くなり、男の身体で自慰をしている時と同じ種類の感覚が、魅恵に襲い掛かりはじめる。晶の愛撫によって、魅恵は性的な心地良さを感じ始めたのだ。
(やばい! 気持ち、良い……)
 無論、魅恵の身体は、素直に快感に反応した。男の時にも先走りが出るように、女の身体でも、股間を先走りの液体が、濡らし始めたのである。しかも、晶がショーツの中に右手を挿入し、股間の割れ目に指を這わせ始めた直後に。
「ミケちゃん……濡れてるよ」
 感じている事を晶に指摘され、魅恵の中で、何かが吹っ切れてしまう。まるで熱が出ている時のように、魅恵の頭の中は、ぼやけ始める。
 理性的な思考力が衰えつつあるのを、魅恵は自覚する。
「あ……ん、やぁ……」
 中指の先端で、晶が魅恵の一番敏感な部分に、小刻みに振動を加え始めた。そのまま二分程、股間や胸への愛撫を続けてから、晶は魅恵への愛撫を止め、魅恵から身体を離す。
(――止め……ちゃうの?)
 頬を火照らせたまま、魅恵は戸惑い気味の表情を浮かべ、晶の出方を窺う。
「続き……して欲しい?」
「え?」
「して欲しいなら、してあげる」
 晶は魅恵の耳朶をくすぐる様に、耳元で囁き続ける。
「嫌なら、今からバイト先、紹介してあげるよ。どうする?」
(そんな……)
 性的な興奮を高められたまま、途中で止めるのは、意外と辛い。中学の時、自慰の途中に、家族が部屋に入ってきて、中断した時のやるせない気分を、魅恵は思い出す。
(こういう気分、身体が疼くとかいうのかな?)
 火が点き、身体の奥底で燻ぶり始めた欲望の炎を意識しつつ、魅恵は思い悩む。
「どうする?」
 魅恵は悩んだ末、答えを出した。
「――やめとく」
 魅恵が自分の誘いを断る訳が無いと確信し、強引にでは無く、本人の合意を得てから、魅恵に本格的に手を出そうと思っていた晶は、心の中で舌打ちをする。しかし、このまま魅恵を諦めるつもりも、無かった。
「残念だな。ミケちゃんが女の子の身体になれるなら、彼女になってあげてもいいって、思ってたんだけど……」
 ジーンズを手に取り、穿こうとしていた魅恵の動きが、止まる。
「――本当?」
「今、付き合ってる女いないから……ミケちゃんだったら、本気で付き合ってもいいよ」
「だけど、男だよ……俺。男じゃ駄目なんだろ?」
「セックスする日だけ、女の子になってくれれば、問題無いじゃない」
「晶姉の事は好きだけど、俺……男なんだ。男として相手してくれないんだったら、付き合うのは嫌だよ」
 魅恵に拒否された晶は、少し考えてから、言った。
「――だったら、交互にしない?」
「交互?」
「あたしが女の子のミケちゃんを抱いたら、次は男に戻ったミケちゃんが、あたしを抱くって訳。それなら、お互いに楽しめるでしょう?」
「いいの、男の俺と……しても?」
「――うん。大丈夫だよ……大丈夫に決まってる」
 本心では男の身体の魅恵との行為は、気が進まないのだろう。晶は自分を納得させるかの様に呟きながら、頷く。
「どう? 悪い話じゃ無いと思うけど」
 魅恵は、悩み始める。晶がレズだという事には驚いたが、それで恋愛感情が冷めたかと言えば、やはり、晶の事は好きだった。しかし、性別を変えながら付き合うのは、魅恵には難しい様に思えたのだ。
 突然、晶がTシャツを脱ぎ始めた。上半身が、魅恵が身に着けているのと同じタイプのブラだけの姿になる。晶は、そのブラも、あっという間に脱ぎ捨て、上半身裸の姿になる。大きくは無いが張りがあり、瑞々しい果実のような両の乳房が、露になる。
「ちょっと、晶姉!」
 憧れの相手の胸を見て、魅恵は慌てる。自分にも同じ物が付いていると言っても、脳の中が男である魅恵にとって、女性の胸は、逃れ難い魅力があるものなのだ。晶は両手で、魅恵の右手を取って、自分の左胸に誘った。柔らかく暖かい感触が、魅恵の手に伝わってくる。
「男の子だったら、好きだよね……おっぱい。付き合ってくれるのなら、好きにしていいんだよ……これ」
 魅恵は少しの間、迷った後、意を決したかの様に頭を下げ、晶の右胸の先端に口を付けると、舐め始める。左胸に誘われたままの右手は、激しく晶の右乳房を揉みしだく。
 晶は軽い吐息を漏らし、胸に埋まる魅恵の頭を、愛おしそうに抱き締めた。

《宣伝》少年少女ミケ(少女の銀輪)1

「家族を抱えたサラリーマンが、リストラされる不景気に、男子高校生のバイト求人が、沢山あるとは思って無かったけどさ……本当に無いね」
 ネットのアルバイト情報サイトをチェックしながら、夏焼魅恵(なつやきみけい)は呟いた。魅恵がいるのは自分の家では無く、親友の葛城慎吾(かつらぎしんご)の部屋でである。
 自分の家のパソコンの調子が悪いので、魅恵は慎吾の部屋でパソコンを借り、バイトを探しているのだ。高校一年の三学期の終業式が終わった直後に、慎吾の部屋に来て以降、魅恵はずっとバイト探しを続けているので、すでに四時間は探し続けている事になる。
「ミケは探し始めるの、遅すぎるんだよ。俺なんか、今月の始めから探し始めて、決まったのが一昨日なんだぜ」
 姉の葛城晶(あきら)と、対戦格闘ゲームに興じながら、慎吾は言った。ミケというのは、「みけい」と読む魅恵の名前から付いたあだ名だ。
 活発で身軽、見た目も可愛い男の子である魅恵のイメージには、猫に通じるものがあり、ミケというあだ名が、子供の頃から定着している。もっとも、日に焼けているかの様な色黒の肌の持ち主である為、ミケという仇名から連想される三毛猫というより、魅恵の印象は黒猫っぽいのだが。
「そんな事言ったって、いきなり金が必要になったんだから、仕方が無いだろ。本当は春休み、バイトするつもりじゃ無かったんだからさ……」
 高一から高二に進級する春休み、魅恵は趣味で参加しているフットサルチームとバスケットチームの試合に、可能な限り参加し、スポーツ三昧の春休みを、満喫するつもりだった。ところが、終業式が終わって葛城家を訪れた直後、その予定が変わってしまったのだ。
「あたし、余計な事しちゃったかな?」
 ゲームを中断して立ち上がった女性が、ショートヘアの頭を掻きながら、気まずそうに呟く。宝塚の男役が務められそうな外見の、この長身の女性が、慎吾の姉の晶である。
 魅恵とは対照的な、色白の肌を持つ晶は、弟の慎吾同様……百八十センチ近い長身の持ち主なのだ。身長が百六十五センチしかない魅恵より、晶は十五センチ近く背が高い。
 椅子に座っている魅恵の後ろに来た晶が、パソコンのモニターを覗き込むと、丁度、胸が魅恵の頭に乗る感じになる。頭の間近にある魅惑的な胸の存在を意識して、魅恵は少し照れてしまう。
 背が高い上に、かなり整った顔立ちの葛城姉弟は、勉強が出来る優等生の上、スポーツ万能であり、性格まで良い。当然、二人とも昔から、異性にも同性にも人気がある。
 それなのに、今だに二人とも、異性との交際経験が無い。親が二十歳前の男女交際を、厳しく禁じているせいだと、魅恵は二人からは聞いている。
「そんな事無いです。凄く嬉しいんですから、俺!」
 魅恵の返事を聞いて、晶は安堵の表情を浮かべる。
「それなら、いいんだけど……」
 晶は魅恵や慎吾より、四つ年上の女子大生である。バイクが趣味の晶は、今度新しい四百ccのバイクを買うので、今まで乗っていた二百五十ccのバイクが不要となり、魅恵が貰う事になったのだ。
 古いバイクなので、中古で売っても、大した値段にはならない。それなら、以前からバイクを欲しがっていた魅恵に、あげようという話になったのである。
 有り難い事に、バイクはただで手に入ったのだが、肝心な免許を、魅恵は持っていなかった。そこで、中型免許を取る事にしたのだが、先立つもの……金が無い。
 金が無いなら、稼ぐしか無いという訳で、魅恵の春休みはフットサルでもバスケットでもなく、アルバイトに費やされる事になったのである。ところが、不景気の上、出遅れたせいか、中々バイトが見つからず、困っていたのだ。
「女の子の接客業だったら、結構あるんだけどなぁ。ウェイトレスとか、ファーストフードのカウンターとか……」
「女装して申し込んでみれば? ミケちゃん可愛いから、誤魔化せるかもよ」
 晶は気楽な口調で、軽口を続ける。
「そういえば、友達がバイトしてる店が、ちょうどウェイトレス募集してるって言ってたな。紹介してあげようか?」
「バレるよ、いくら何でも」
 確かに、魅恵は外見だけなら、ボーイッシュな少女と言っても通用する……というレベルを超えて、少女にしか見えないタイプである。だが、ウェイトレスのバイトと言えば、制服に着替えたりしなければならないので、幾ら女装しても、誤魔化し切るのは無理だろうと、魅恵は思う。
「そうかなぁ?」
「そうだよ!」
 魅恵は不愉快さを噛み殺しながら、力強く否定した。実は魅恵は、女の子っぽい自分の外見が、余り好きでは無い。
 スポーツは万能で喧嘩も強く、勉強もトップクラスなのだが、魅恵も葛城姉弟同様、異性との交際経験が無い。葛城家の二人と違って、親に男女交際を禁じられている訳では無いのだが、見た目が男に見えないのが災いして、女性から男性扱いされてこなかった事が、その大きな原因の一つだったのだ。
 一部の女子プロレスラーの様に、男勝りを通り越して、男性的と言える程の外見の女性は、男から見て恋愛の対象には、成り辛い。それと同じで、殆どの女性より、外見上の女性的な美しさに恵まれてしまった魅恵は、女性からすれば、複雑な感情を抱かざるを得ない、微妙な存在なのである。
 おまけに、余り女と縁が無いのに、美少女然とした外見のせいで、男から痴漢されたり、口説かれたりする事は、何度も有るのだから、魅恵が自分の外見を好きでは無くなるのも、無理は無い。
 そして、魅恵の身近にいる憧れの人も、自分を恋愛対象として、見てはくれていないらしいと、魅恵は認識している。
(こんな外見で無ければ、男として……恋愛対象として、見てくれるかもしれないのにな)
 女装してバイトする事を勧めてくる晶を見て、魅恵は苦笑しながら、溜息をつく。

 結局、バイトに関しては何も決まらないまま、魅恵は慎吾の部屋を、晶と共に後にした。陽が沈んだ直後なので、西の空だけが、まだ少しだけ明るい。薄暗い住宅地の道を、魅恵と晶は、並んで歩いて行く。
 慎吾は親がオーナーであるアパートの一部屋を、自分の部屋として使い、一人暮らしに近い生活を送っているのだが、晶は親と同居している。慎吾のアパートと魅恵の家の間に、葛城家があるので、慎吾の部屋で晶と一緒になった場合などは、魅恵は途中まで、晶と一緒に帰る事が多い。
「元気出しなよ。中免試験用の参考書とか、あたしが使ってたの、あげるから」
「ありがと……」
「商店街の店の店頭なんかでも、バイト募集のチラシとか貼ってあるから、チェックしてみたら?」
「そうしてみる。その手のチラシの方がネットや求人情報誌より、当てになるかもな」
「ま、いざとなったらミケちゃんには、女装してウェイトレスって手もあるけどさ」
「それは無いって」
「そうかなー、イケると思うんだけど……勿体無いな。ミケちゃん、女の子より可愛いのにね」
 晶は、残念そうに呟く。大きな掌で魅恵の頬を、優しく撫でながら。
 頬を撫でられた魅恵は、頬を染める。照れ隠しの為に、何か別の話題に切り替えようと、魅恵は頭を巡らすが、話題を切り替える前に、葛城家の前に辿り着いてしまった。
「免許とったら、二人でツーリング行こうね! お休み!」
 目的地である自宅に着いたので、晶は魅恵に手を振りながら、玄関に向かう。ドアの開閉音を、夜になろうとしている辺りに、響かせながら、晶は家の中に姿を消す。
 晶を見送った後、ほんの十メートル程先にある自分の家に向かって、魅恵は歩き出した。
(晶姉(あきらねえ)と二人でツーリングかぁ……)
 魅恵は、晶とツーリングに出かける自分の姿を想像して、顔を弛ませる。実は、晶は魅恵の初恋の相手であり、今現在でも憧れの存在でもある。
 普段から魅恵と晶は、良く一緒に遊んでいる仲なのだが、姉貴分と弟分という関係が、長く続いてしまっていた。晶が異性との交際を禁じられていた為、それ以上の関係が成立し難い状態だった事が、そんな関係が長続きした原因だと、魅恵は思っている。
 最近、晶は二十歳の誕生日を迎えたので、すでに親も、異性との交際を禁じてはいない。晶との関係を、恋人関係にまで発展させたい魅恵にとっては、晶が二十歳を過ぎると同時に、晶からバイクを貰える事が、運命的な出来事のように思えたのだ。
(こりゃあ、気合い入れて、バイト探さないとな。ちょっと、商店街の方見てくるか……)
 魅恵は、自宅の前を通り過ぎ、破魔崎(はまさき)商店街の方に向かって、歩き出した。

「あれ? 珍しいな、開いてるよ」
 破魔崎商店街に辿り着いた魅恵は、普段は殆ど閉まっている店が、珍しく開いているのに気が付いた。珍しくも開いていたのは、妖シ屋(あやしや)という、かなり妖しい名前の古物商である。
 明治や大正時代の建築物を思わせる、古臭いデザインの妖シ屋は、魅恵達の地元の破魔崎市では、割と有名な店である。月に一日か二日しか開いていないと言われる程、営業している事が珍しい上、かなり妙な物を売っているという評判なので、魅恵も、一度は店の中を、見てみたいと思っていたのだ。
 興味を惹かれて、妖シ屋の店頭を覗いてみた魅恵は、店頭に貼られていた求人チラシの存在に気付く。「店番募集、詳細は面接にて」という、大雑把なチラシである。
(ラッキー! 丁度いいや、店の中を覗きついでに、一応話を聞いてみるか)
 魅恵は気楽に、妖シ屋に入る事を決めた。ドアに手を伸ばし、開けようとすると、ドアは勝手に開いた。とても自動ドアには見えない、木製の引き戸である。
「――自動なんだ……ボロい木戸なのに」
「いらっしゃい」
 低いトーンの女性の声が、魅恵を出迎えた。声のする方……薄暗い店の奥には、時代物のレジスターを前にして座っている、三十代後半くらいに見える女性がいる。
 店の女主人なのだろう。魅恵の好みでは無いが、ウエーブのかかった長い黒髪が印象的な、かなり男好きのする感じの、艶っぽい大人の女性である。
 占星術系の女占い師の衣装を、少し地味にした感じの服に、豊かではあるが、肥満とは縁遠い身体を包んでいる女主人は、怪し気な雰囲気を漂わせている。妖しい物が、雑然と並んでいる店の雰囲気と、良く似合っている人だなと、魅恵は感じた。
「あの……表のチラシ見たんですけど。店番募集っていう……」
「ああ、バイト希望の方。君は……男の子よね?」
「そうですけど」
「ウチの店の店番は、基本的には女じゃないと、勤まらないんだけど……」
「そうなんですか、それは残念」
「あ……けど、君くらいに可愛かったら、男でもいいかな。身体が男でも、女になって貰えばいいんだから」
「はぁ……女装するんですか?」
(今日は、良く女装しろと言われる日だな……)
 魅恵は少し、うんざりした気分になる。
「女装じゃなくって、女になるのよ」
(女になる? どういう事だ?)
 いきなり、変な事を言い出す女だなと、魅恵は思う。
「今……私の事、変な女って思ったでしょう?」
「あ、いや、そんな」
 図星だったので、魅恵は狼狽える。女主人は、そんな魅恵を見て、楽しそうに笑った。
「いいな……君、気に入ったよ」
 微笑みながら、女主人は魅恵に語りかけ続ける。
「君、うちで働かない? 週に二日位のペースで、長期で働ける人を探してるんだけど……」
「あ、長期しか募集してないんですか?」
 女主人は、頷いた。
「長期しか募集してないんでしたら、他を探します。春休みの短期バイト、探してるんで」
「そう……残念ね。春休みが終わって、長期のバイトとか探す事になったら、ウチの店に来てね、歓迎するから」
「そうします」
 無論、社交辞令である。家の近所の店で、女装して長期間働くつもりは、流石に魅恵には無かったのだ。
「――女装してバイトっていうのは、やっぱキツイもんがあるよな、流石に……」
 独り言のつもりだった魅恵の呟きは、女主人の耳に届いてしまう。
「だから、女装じゃなくって、女になって貰うって言ったんだけど」
「店番のバイトする為に、性転換手術する人なんていませんよ」
「手術なんて、必要無いの。そこにある指輪をはめるだけでいいのよ」
 女主人は、魅恵の右隣の棚を指差した。棚には、古びたアクセサリーが並んでいる。様々な不思議な紋様が刻まれた、指輪やブレスレット、ネックレスなどが並んでいるが、掃除が行き届いているのか、ほこりは殆ど被っていない。
「乙女座の印が刻んである、銀の指輪があるでしょう?」
(これかな?)
 魅恵は、指輪の一つを手に取った。シンプルなシルバーのリングの表面に、乙女座の紋様が刻んであるリングである。
「『処女の銀輪(しょじょのぎんりん)』っていう指輪なの。その指輪をはめた男の人は、午前零時を過ぎると、その後二十四時間……身体が女になるのよ」
 女主人は、銀色の指輪……処女の銀輪を眺めながら、続ける。
「指輪をはめたままにすれば、何日でも何年でも、女のままでいられる、魔法の指輪って訳」
「まさか!」
「嘘だと思うんなら、試してみる? 君なら、可愛い女の子になると思うな」
「そんな馬鹿な事、ある訳無いじゃないですか」
 魅恵は、女主人の言う事を、一笑に伏しながら、指輪を右手の薬指にはめてみる。サイズは魅恵の指に、ぴったりだった。
「この指輪のデザイン、好きだな。売り物なんですよね、これ?」
「そうだけど……」
「幾らなんです?」
「そうねぇ……君なら、百円でいいわ」
「百円? だったら、買います! 俺、指輪集めてるんですよ!」
 ポケットから百円玉を取り出して、魅恵は女主人に手渡した。
「売るのは構わないんだけど、四つ程……注意しておく事があるの」
「注意?」
「一つ目は、女になったら、二十四時間は絶対、男に戻れないという事。二つ目は、次の日……男に戻りたいっていう時には、午前零時が来る前に、指輪を外さないとダメだって事」
 魅恵は頷きながら、女主人の注意に耳を傾け続ける。
「三つ目は……女になってる時は、警察沙汰になるような真似をしない事。警察が動いて、うちの店が調べられるようになったら、困るから」
「女になる指輪なんて、警察がまともに取り合ってくれるとは思えないけどな」
「そうかもね」
 女主人は意味深な笑みを浮かべながら、魅恵に同意する。
「それで……最後の、一番気をつけなくてはいけない四つ目の注意は、女になっている時に、男相手にセックスしたら、男でも女でも無くなってしまうって事ね。女相手なら大丈夫だけど」
「男でも女でも無くなる?」
「――男女両性体とか両性具有者とか、日本の古い言葉だと、ふたなりとか言われてた、男と女の中間の性別になっちゃうのよ」
 男女両性体などの存在は、オタク系の娯楽作品などに、たまに出て来るので、魅恵も知っていた。
「まぁ、『処女の銀輪』っていうくらいだから、処女で無くなるような真似をした人間には、そういう罰があるって事ね」
「乙女って、処女の事か……」
 処女の銀輪に刻まれた、乙女座の紋様を見ながら、魅恵は呟く。
「君は信じて無いみたいだけど、それは本当に女になる指輪なの。注意事項を守らないと、とんでもない目に遭うから、気をつけてね」
「分かりました」
 分ったと言いながらも、女主人の話を、魅恵は全く信じていなかった。

 結局、商店街でもバイトは見つからなかった。家に帰った魅恵は、夕食を食べて風呂に入り、テレビを見てから、自分の部屋に戻って、ベッドに寝転ぶ。
 ふと、枕元を見ると、処女の銀輪が置いてあった。魅恵は指輪を、右手の薬指にはめてみる。蛍光灯の光を反射し、煌めくシルバーのリングを見て、少しだけ、魅恵は気分が良くなる。
「今日は、これが手に入っただけで、良しとするか……。また行ってみよう、妖シ屋」
 時計を見ると、午前十一時過ぎ。次第に睡魔が、魅恵の身体を支配し始めた。
(あ、指輪外さないと、女になっちゃうんだ……)
 魅恵は指輪を外そうとするが、外すのを止めて、くすくすと笑い出してしまう。
(俺、あんなバカな話、信じてるのか?)
 女主人の荒唐無稽な話を、真に受けたかのような行動を取ろうとした自分自身が、魅恵は面白くて仕方が無かったのだ。結局、魅恵は指輪をそのままにして、目を閉じた。
(本当に女になってたら、晶姉にウェイトレスのバイトでも、紹介して貰おうっと……)
 無論、そんな事になど、なる訳が無いと思いながら……。

《告知更新》今後の予定や同人の話など……

 当blogの今後や、同人版の「処女の銀輪」に関する告知の更新です。小説では無いので、興味無い方はスルーして下さい。

告知1 blog掲載分の「処女の銀輪」は、近い内に全て消えます。保存しておきたい方は、お早めに。

告知2 「処女の銀輪」の同人版、「少年少女ミケ」が、近い内にDLsite(同人ダウンロードショップ)で販売されます(DLsiteの審査で落ちない限り)。
 発売に合わせて、改めて推敲した同人バージョンの「処女の銀輪」の、体験版収録相当分の掲載が、暫く続きます(ぶっちゃけ宣伝)。
 以下、DLsiteに登録したばかりの宣伝文句を、そのまま引用。

       ☆       ☆       ☆       

男を女に変える魔法の指輪、処女の銀輪を手に入れた少年……魅恵(みけい)は、レズビアンの幼馴染の恋人になる為、処女の銀輪をはめて、少女にも変われる少年となる。そんな魅恵は、恋人の親友(女)や痴漢に痴女、更には恋人の弟である親友(男)までもから、身体を狙われる羽目に!
しかし、処女の銀輪の所有者には、処女を失ってしまうと、その身に罰を受ける事になるという、ペナルティがあるのだった……。

そんなTSF系の長編小説(四百字詰め原稿用紙換算570枚相当)、「処女の銀輪」に加え、「処女の銀輪」の番外編短編小説を、四本(四百字詰め原稿用紙換算、四本合計で230枚相当)収録したのが、「少年少女ミケ」です!

       ☆       ☆       ☆       

 同人版を出すにあたり、「処女の銀輪」の枚数を四百字詰め原稿用紙換算で数えてみたら、570枚くらいでした。大体、ライトノベルとかの文庫本が一冊300~400枚らしいので、本編の推敲を進めつつ、番外編を何本か書き足して700枚くらいにして出すつもりだったんですが、妙に筆が進んで800枚くらいになってしまいました。
 審査に通らないという間抜けな事態に陥らない限り、11月中には発売されると思うので、興味ある方はDLsiteの方でご購入下さい。
 ちなみに、四本の番外編の概要は、大体こんな感じです(同人版の解説文より引用)。

①災難の前奏曲
 本編では、詳しく触れられる事が無かった、魅恵が処女を失った当日、バイト帰りに痴漢に襲われた時のお話を綴った、「処女の銀輪」の番外編です。

②メモリーカードの行方
 本編終盤で魅恵は、輪姦された映像が記録されたメモリーカードを、落としてしまいました。そのメモリーカードが、その後どうなったかという話を綴った、「処女の銀輪」の番外編です。

③夢落ち?
 水泳の授業中、クラスメートの悪戯で発情してしまった魅恵は、プールから出た後、空夜に強引に迫られてしまい……というお話を綴った、「処女の銀輪」の番外編です。

④兄さんは、私の物
 夏休み、沖縄から破魔崎に戻って来た、妹の伊月と魅恵の話を綴った、「処女の銀輪」の番外編です。

 そんな訳で、五年の長きに渡り続いた「処女の銀輪」は、この同人版の発行をもって終わりとなり、当blogは次の作品に移行します。

告知3 次の作品も、相変わらずのTSF系アダルト小説ですが、魔女モノを予定しています。

 以上、告知更新でした。
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