「これで、魔法の存在も、アテュを授けられた黒羽裏家の僕が、変身出来る事も、信じて頂けたでしょう」
昨夜、血塗鴉に殺されかけた際に目にした、黒騎士風の格好に変身した上で、そう言われてしまえば、威智も天魔の話を信じるしか無い。威智は目を丸くしながら、何度も頷く。
威智が頷いたのを確認すると、天魔はタロットカード風のベルトのバックルに、左掌を当てながら、口を開く。
「――ギャザー・アンド・バンドル!」
集めて束にする……といった意味合いの言葉を天魔が口にすると、プロテクターが再び無数のカードに変化し、黒から元の色合いである黄色に変色しながら、ベルトのバックルに集まり始める。変身した際の映像を逆回しにしているかの様に、無数のカードは一枚に収束し、執事服姿に戻った天魔の左掌に納まる。
「ちなみに、私が授かっているのは、二十一番目のアテュ……宇宙」
宇宙が描かれたカードを威智に見せてから、天魔は懐にしまう。
「アテュが宇宙で、変身した後は騎士みたいな格好になるから、変身した状態の切裂さんは、テッカマンって呼ばれてるんだ」
「そんな、タツノコプロの古臭いアニメみたいな呼ばれ方は、誰からもされてません」
桃生の冗談に突っ込んだ直後、天魔の懐から、荘厳なクラシックのメロディが流れる。ホルストの作曲した、土星という曲である。
「――失礼、悧音様からです」
天魔は携帯を取り出し、電話をかけてきた相手である悧音と、会話を始める。威智と桃生を放置して、一分間程話してから、天魔は携帯を切って懐にしまう。
「天慶さんが目覚めているなら、早く執務室に連れて来いとの催促です」
「悧音から?」
威智の問いに、天魔は頷く。
「私は此処に、天慶さんが目覚めているかどうかの確認に来ていたのですが、つい話し込んでしまいました。それでは天慶さん、執務室までおいで下さい」
「いや、おいで下さいって言われても、俺ハダカだから!」
掛け布団を胸まで被ったまま、威智は恥ずかしそうに続ける。
「何か着る物が無いと、部屋から出られないって! つーか、俺は何でハダカなのよ?」
「傷の再生具合や、女性化の進行状態をチェックし易いから、松戸先生が天慶さんに、服を着せない様にと、指示を出していたもので……」
「いやー、それ松戸先生が天慶さんのハダカ、見たかっただけだと思うな」
そう言った直後、桃生は突如、何かに気付いたかの様に、声を上げる。
「あ、そうだ! 私がこの部屋に来たの、天慶さんが着る服を届ける為だった!」
桃生はエプロンのポケットに手を突っ込むと、中から折り畳まれた服の束を取り出す。
(――どうなってんだ、こいつのエプロンのポケット?)
どう見ても、エプロンのサイズよりも大きな物が出て来る、桃生のエプロンを見て、威智は不思議そうに首をかしげながら、心の中で呟く。
「天慶さんが目覚めたら、ハダカじゃ困るだろうから、部屋に服を届けておいてくれって、さっき御主人様に言われたんで、ここに来たんですよ……私」
取り出した服の束を、桃生は威智に手渡す。
「どうぞ」
「あ、どうも」
威智は軽く頭を下げ、桃生から服の束を受け取る。
(悧音の奴、結構気が利くじゃねえか)
裸の状態に心許なさを感じていた威智は、ようやく服を着られる事に安堵しながら、服を届けさせてくれた悧音に、有り難さを感じる。しかし、その感情は長くはもたなかった。
何故なら、服の束を解いた威智は、自分が着るようにと手渡された服が、桃生が着ているのと同じ、メイド服一式であった事に、気付いたからである。
「何だよ、これ! メイド服じゃねえか! 着れるかよ、こんなもん!」
威智はメイド服を丸めて、桃生に叩き付ける。
「こ、こんなもん? この素晴らしきビクトリアンなメイド服を、こんなもん扱いするとは! 貴様は矢張り、メイド喫茶という名の風俗店に通い、フレンチメイドという名の売女に、金を払って媚売らせる、脳が汚染されたオタクなのか!」
自分も着ている、ビクトリア形式のメイド服を、こんなもん扱いされ、桃生はいきり立つ。
「いや、ビクトリアンかフレンチかという問題じゃなくて、男の俺が着る服として、女物のメイド服を持ってくる時点で、間違ってるっつーの! 男物を持って来いよ、男物を!」
「そう言われても、黒羽裏家の衣装室には、男物のメイド服は無いんだよねー」
「男物のメイド服じゃなくて、男物の服を持って来いって言ってるんだよ! 普通の男物の服を!」
「どうせこれから、女物の制服で学校とか通う羽目になるんだから、今の内から女物の服に慣れておいた方が、いいと思うんだけど」
桃生の話を聞いた威智は、訝しげな顔で聞き返す。
「女物の制服で学校とか通う羽目になる? 俺が? それ、どういう意味だよ?」
「――その辺りの話は、後ほど御主人様から……」
威智と桃生の会話に、天魔が割り込んでくる。
「愛哉さん、とりあえず今日は男物の服でいいです。衣装室から天慶さんの身体に合いそうな、男物の服を持って来て下さい」
天魔が桃生に、そう指示した直後、再び室内にホルストの土星が流れ始める。天魔は懐から取り出した携帯電話で、話し始める。
通話は一分もかからずに終わり、天魔は携帯電話を懐にしまう。
「御主人様からの、急ぎの呼び出しです。私は先に執務室に向かいますので、愛哉さんは男物の服を持って来た後、天慶さんを執務室まで連れて来て下さい」
そう言い残すと、天魔は威智に背を向け、ドアに向かって歩き出す。
「あ、私も!」
桃生も男物の服を取りに行く為、天魔の後を追い、ドアに向かう。そのまま、桃生と天魔はドアを開け、部屋から出て行った。
威智は呆然とした表情を浮かべ、二人が出て行ったドアを眺める。
「――何かいきなり、静かになったな」
先程までの喧騒が嘘であったかの様に、威智一人となった室内は、桃生と天魔が現れる前の静けさを取り戻していた。だが、その静けさは長続きはしなかった。
☆ ☆
TSしたものの、アダルトなシーンに中々突入しませんが、これは確実にアダルト向け小説です。とりあえず、次回エロ魔法医登場予定。
☆ ☆
前作のTSF系アダルト向けライトノベル「少年少女ミケ」、DLsiteで発売中!
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昨夜、血塗鴉に殺されかけた際に目にした、黒騎士風の格好に変身した上で、そう言われてしまえば、威智も天魔の話を信じるしか無い。威智は目を丸くしながら、何度も頷く。
威智が頷いたのを確認すると、天魔はタロットカード風のベルトのバックルに、左掌を当てながら、口を開く。
「――ギャザー・アンド・バンドル!」
集めて束にする……といった意味合いの言葉を天魔が口にすると、プロテクターが再び無数のカードに変化し、黒から元の色合いである黄色に変色しながら、ベルトのバックルに集まり始める。変身した際の映像を逆回しにしているかの様に、無数のカードは一枚に収束し、執事服姿に戻った天魔の左掌に納まる。
「ちなみに、私が授かっているのは、二十一番目のアテュ……宇宙」
宇宙が描かれたカードを威智に見せてから、天魔は懐にしまう。
「アテュが宇宙で、変身した後は騎士みたいな格好になるから、変身した状態の切裂さんは、テッカマンって呼ばれてるんだ」
「そんな、タツノコプロの古臭いアニメみたいな呼ばれ方は、誰からもされてません」
桃生の冗談に突っ込んだ直後、天魔の懐から、荘厳なクラシックのメロディが流れる。ホルストの作曲した、土星という曲である。
「――失礼、悧音様からです」
天魔は携帯を取り出し、電話をかけてきた相手である悧音と、会話を始める。威智と桃生を放置して、一分間程話してから、天魔は携帯を切って懐にしまう。
「天慶さんが目覚めているなら、早く執務室に連れて来いとの催促です」
「悧音から?」
威智の問いに、天魔は頷く。
「私は此処に、天慶さんが目覚めているかどうかの確認に来ていたのですが、つい話し込んでしまいました。それでは天慶さん、執務室までおいで下さい」
「いや、おいで下さいって言われても、俺ハダカだから!」
掛け布団を胸まで被ったまま、威智は恥ずかしそうに続ける。
「何か着る物が無いと、部屋から出られないって! つーか、俺は何でハダカなのよ?」
「傷の再生具合や、女性化の進行状態をチェックし易いから、松戸先生が天慶さんに、服を着せない様にと、指示を出していたもので……」
「いやー、それ松戸先生が天慶さんのハダカ、見たかっただけだと思うな」
そう言った直後、桃生は突如、何かに気付いたかの様に、声を上げる。
「あ、そうだ! 私がこの部屋に来たの、天慶さんが着る服を届ける為だった!」
桃生はエプロンのポケットに手を突っ込むと、中から折り畳まれた服の束を取り出す。
(――どうなってんだ、こいつのエプロンのポケット?)
どう見ても、エプロンのサイズよりも大きな物が出て来る、桃生のエプロンを見て、威智は不思議そうに首をかしげながら、心の中で呟く。
「天慶さんが目覚めたら、ハダカじゃ困るだろうから、部屋に服を届けておいてくれって、さっき御主人様に言われたんで、ここに来たんですよ……私」
取り出した服の束を、桃生は威智に手渡す。
「どうぞ」
「あ、どうも」
威智は軽く頭を下げ、桃生から服の束を受け取る。
(悧音の奴、結構気が利くじゃねえか)
裸の状態に心許なさを感じていた威智は、ようやく服を着られる事に安堵しながら、服を届けさせてくれた悧音に、有り難さを感じる。しかし、その感情は長くはもたなかった。
何故なら、服の束を解いた威智は、自分が着るようにと手渡された服が、桃生が着ているのと同じ、メイド服一式であった事に、気付いたからである。
「何だよ、これ! メイド服じゃねえか! 着れるかよ、こんなもん!」
威智はメイド服を丸めて、桃生に叩き付ける。
「こ、こんなもん? この素晴らしきビクトリアンなメイド服を、こんなもん扱いするとは! 貴様は矢張り、メイド喫茶という名の風俗店に通い、フレンチメイドという名の売女に、金を払って媚売らせる、脳が汚染されたオタクなのか!」
自分も着ている、ビクトリア形式のメイド服を、こんなもん扱いされ、桃生はいきり立つ。
「いや、ビクトリアンかフレンチかという問題じゃなくて、男の俺が着る服として、女物のメイド服を持ってくる時点で、間違ってるっつーの! 男物を持って来いよ、男物を!」
「そう言われても、黒羽裏家の衣装室には、男物のメイド服は無いんだよねー」
「男物のメイド服じゃなくて、男物の服を持って来いって言ってるんだよ! 普通の男物の服を!」
「どうせこれから、女物の制服で学校とか通う羽目になるんだから、今の内から女物の服に慣れておいた方が、いいと思うんだけど」
桃生の話を聞いた威智は、訝しげな顔で聞き返す。
「女物の制服で学校とか通う羽目になる? 俺が? それ、どういう意味だよ?」
「――その辺りの話は、後ほど御主人様から……」
威智と桃生の会話に、天魔が割り込んでくる。
「愛哉さん、とりあえず今日は男物の服でいいです。衣装室から天慶さんの身体に合いそうな、男物の服を持って来て下さい」
天魔が桃生に、そう指示した直後、再び室内にホルストの土星が流れ始める。天魔は懐から取り出した携帯電話で、話し始める。
通話は一分もかからずに終わり、天魔は携帯電話を懐にしまう。
「御主人様からの、急ぎの呼び出しです。私は先に執務室に向かいますので、愛哉さんは男物の服を持って来た後、天慶さんを執務室まで連れて来て下さい」
そう言い残すと、天魔は威智に背を向け、ドアに向かって歩き出す。
「あ、私も!」
桃生も男物の服を取りに行く為、天魔の後を追い、ドアに向かう。そのまま、桃生と天魔はドアを開け、部屋から出て行った。
威智は呆然とした表情を浮かべ、二人が出て行ったドアを眺める。
「――何かいきなり、静かになったな」
先程までの喧騒が嘘であったかの様に、威智一人となった室内は、桃生と天魔が現れる前の静けさを取り戻していた。だが、その静けさは長続きはしなかった。
☆ ☆
TSしたものの、アダルトなシーンに中々突入しませんが、これは確実にアダルト向け小説です。とりあえず、次回エロ魔法医登場予定。
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